経営の健全性・効率性について
経常利益は黒字であるが、経費回収率が非常に低く、一般会計からの繰入金に依存している。汚水処理原価が使用料単価と比べて高い。そのため使用料の見直しにより、令和6年度及び令和7年度に使用料を改定することが決まっている。また、員弁川流域の水質基準は厳しく、水質の維持を考えるとこれ以上の汚水処理原価の低減は困難と考える。流動比率は一般会計からの繰入により類似団体より高く、公共下水道事業、特定環境保全公共下水道事業と合わせると若干100%を上回る程度である。預金に余裕がないため一般会計からの毎年の繰入が前提となっている。企業債残高対事業費率は類似団体より非常に低く、新たな借入が発生するような整備予定もない。ただし、老朽化への更新が進んでいないため、今後の更新次第では増える可能性がある。水洗化率は既に高い水準にあり、今後大きな伸びは見込めないため、新規接続による使用料収入の増加は期待できない。農集地域は4,000強の地域に11箇所の処理施設が点在しているため、農業集落排水事業としての改善は見込めない。ただし、流域下水道への統合を図ることで下水道事業全体としての維持管理費の削減をしていくことができる。
老朽化の状況について
供用が早い地区で開始から約30年、最も新しい地区で20年弱になる。管路についてはしばらく全体的な改修は必要ないと考えられる。しかし、類似団体と比較すると減価償却率が非常に高く、計画的な設備の更新が進んでいない。今後、同時期に施設の改修が重なると予想されることから、計画的な更新やその資金の確保に努めなければならない。処理施設やマンホールポンプの電気、機械設備については、機能強化を利用して優先順位の高いところから更新を行ったが、老朽化している設備は多く、更新すべき時期が近付いている。また、流域下水道区域に近い処理施設については、順次流域下水道へ統合していく計画がある。統合計画は12ある施設のうち4つを統合するものであり、令和3年度末時点ではその内の1つが統合済みである。
全体総括
一般会計からの繰入が前提となっているので、その上でどうするか考える必要がある。公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水とも市内同一の使用料体系で、水洗化率が高く人口は減少傾向のため、使用料の改定を除けば収入の増加につながる要素はない。支出についても処理場を減らさない限り、減額につながる要素はない。地方公営企業法を適用して3年目となり、コロナ禍での今後の推移を確認しつつ、長期的な視野で経営の健全化に努めなければならない。