経営の健全性・効率性について
経常収支比率は,給水人口の減少に伴う給水収益の低下や補助金の削減により,今後も低下の傾向が予想される。工場の撤退や宿泊施設の廃業等により,給水人口の減少や人口密度の低下が進んでいることから,給水にかかる費用は増加傾向であり,これを賄うためには,水道料金の大幅な改定が必要となってしまう。このため,千葉県水道総合対策事業補助金や市町村補助金といった一般会計からの補助金を繰り入れ水道料金が極端に高額にならないようにしている。施設利用率は、平均値より高いものの,有収率は平均値より低く,このことは漏水等の料金収入につながらない水量が多いことを表している。そこで,当企業団では給水原価を下げるため,漏水量が多いと思われる区域を分析し、地区別漏水量の多い地区を中心に漏水調査の実施と老朽管の更新を優先して更新することにより、有収率向上を目指し施策を行っている。また,平成30年4月1日に水道料金改定(平均改定率5%)を実施した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響により、収益性の高い営業用水量が減量していたが,令和3年度には回復し,経常収支比率は102.31%と健全経営の水準とされる100%を上回った。営業収支等は一時的に改善したが,今後も新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響による営業用水量の減少や継続的な給水人口減少傾向により,水道料金収入の伸び悩みが続く一方、水道施設の維持管理費用は年々増加すると予想される。このように,当企業団の水道事業を取り巻く状況は,大変厳しい状況であり,より一層の経常費用削減や適切な料金徴収に努める必要があると考えている。
老朽化の状況について
管路経年化率が,平均値に比べて著しく高いことから,当企業団における管路老朽化の度合は,非常に高いと考えている。また,有形固定資産減価償却率についても平均値と比較して高く,かつ,増加傾向により,管路のみならず,施設等についても老朽化が進行していると捉えている。これらのことは,有収率向上や施設の強靭化を踏まえて,更新が急務であると認識している。有収率は74.76%と前年度より1.94ポイント増加している。これは令和3年度から漏水調査委託業務を実施し,漏水箇所の早期発見から,迅速な漏水修理に繋げることで漏水量を減らし,有収率の改善を図ることができた結果である。当企業団としては,漏水多発地区や無効水量の多い区域の老朽管等を優先的に更新しつつ,老朽管更新計画にのっとり,老朽管の更新を計画的に実施する方針である。人口減少及び新型コロナ感染症拡大に伴う影響により,更なる水道料金の減収が想定される厳しい財政状況であるが,限られた予算及び人員の中で老朽管の更新を効率よく進める必要がある。更新計画にある管路をベースとし,管路の重要度,道路改良工事及び他の占用工事等の状況,漏水多発地区等を総合的に判断し,より重要度が高く,費用対効果の高い管路から老朽管更新事業を実施していく方針である。また、浄・配水場施設の統廃合による管路の変更(新設・廃止)も含め、配水管網の水理解析による適正管径の採用(増・減口径)など、施設整備計画との整合を図りながら合理的な配水管網計画を立案し、改良・更新事業を引き続き実施する。
全体総括
工場の撤退や宿泊施設の廃業等による産業構造の変化に伴う人口減少により,給水収益は大幅に落ち込んできた。平成30年4月1日に水道料金改定(平均改定率5%)を実施したが、その後も施設の老朽化に伴う維持管理費の増加を賄う程の収益改善には至っておらず、今後も新型コロナウイルス感染症拡大、自然災害、人口減少の影響から給水に係る費用を料金収入で賄えているかどうかを評価する料金回収率は,さらに低下していくことが予想される。また,施設の老朽化に伴い,有収率についても低下していくことが考えられる。そのため,当企業団は,将来にわたって安定的な事業継続をしていくため,中長期的な視野に立った経営の基本計画である,水道事業経営戦略を平成28年度に策定している。経営戦略にのっとり,経常経費の削減を行いながら,漏水の多発する地区や無効水量の多い区域の老朽管等の更新を前倒しで実施するなど,適切な管路更新を継続して行っていく方針である。また,施設の維持管理費を抑えるため,休止中の施設については,水需要の動向を見ながら適宜縮小,廃止を計画的に進めて行く方針である。