経営の健全性・効率性について
経営の健全性・効率性については,類似団体との比較においては著しく劣っている分野はないと考える。①経常収支比率については、経常利益である給水収益は前年に比べ増えたことにより、100.45%と黒字であることを示す100%を超えたものの、類似団体平均値を下回っている。これは、新型コロナウイルス、災害の影響により、ホテル旅館等の給水需要が大きいところで伸び悩んでいることと、経常費用である営業費用についても災害の影響による修繕等の費用が増加しているためである。改善傾向を続けていた指標は⑧の有収率であったが災害や新型コロナウイルスの影響などにより有収水量が大幅に減少したため、前年より減少した。③流動比率については、前年度は年度をまたぐ支払いが多くあったが、今年は災害の影響により工期が伸びたものなど未払金が発生したものの、その額は前年よりは少なくなっていることや、給水収益増加により流動資産である現金が増えたため上昇した。また、施設整備や老朽管の布設替等の投資額増加に伴いその財源として企業債を借入れたが、給水収益増加に伴い④企業債残高対給水収益比率についてわずかではあるが減少している。⑤料金回収率については経常収支比率同様、前年と比べ給水収益が増加したため、供給単価が上昇した一方、年間総有収水量が減少しているにもかかわらず、給水原価も上昇したため、全体として微増となった。給水需要が伸び悩んでいるため、引き続き費用の削減を心掛け健全経営に努めるものである。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率については、前年度に比べ、若干増加したが、資産の老朽化度合は類似団体と比較して低くなっている。③管路更新率でわかるように、更新した管路延長の割合は類似団体と比較して高いにもかかわらず、法定耐用年数を経過する管路の増加が大きいため、②管路経年化率は過去5年を比較しても高くなっている。これは全国で17番目に創立した歴史ある事業であるとともに、高度経済成長期に集中して設備投資した管路があるためである。従て、老朽管の布設替が急務となっており、市としては、平成30年3月に策定した熱海市水道事業基本計画に基づき、今後も計画的に投資していくものである。管路更新率は2.5%の場合、全ての管路を更新するには40年を要するため、今後も、経営状況を勘案しながら、管路更新を計画的に行う必要があるといえる。
全体総括
老朽化した水道施設の更新費用や維持管理費の増加が予測される中、人口減少や節水機器の普及により有収水量の減少は今後も続く状況にある。平成30年3月には経営戦略を策定したところではあるが、投資と経営を両立させるために、経費節減及び適正な料金水準の維持に努めるものである。新型コロナウイルスの影響を大きく受けている状態で景気の回復も見込むことが難しいことではあるが、今後も安定した水道の供給に取組みつつ、質の高い経営水準を目指していくものである。