経営の健全性・効率性について
過去5年の経常収支比率は、いずれも100%を上回っており、経常利益を計上し健全な水準にあると言える。また、短期債務に対する支払能力を示す流動比率は、100%を上回っており、現時点では資金運用に支障を来す状態にはないと考えられる。企業債残高対給水収益比率は、類似団体平均値を上回っており、給水収益に対する企業債残高の規模が類似団体より大きいと言えるが、石綿セメント管や老朽管の更新事業を行うなど、水道施設の必要な更新を計画的に実施しているためと考えられる。料金回収率については、100%を上回って推移し、さらに類似団体平均値も上回っている。これは、給水収益単独で給水に必要な原価を回収できており、採算性を確保していることを示していると言える。また、給水原価については、概ね130円前後で推移しており、類似団体と比較して約38円程度低い。施設利用率は、類似団体平均値を上回っているものの、低下傾向にある。主な低下要因は、給水人口の減少及び節水機器の普及並びに節水意識の高まりによる生活用水使用量の減少によって、年間総配水量が減少していることが挙げられる。また、有収率が低い水準となっているが、漏水、メーターの不感、消防用水等いくつかの要因が考えられる。無効水量の多くが漏水であることを踏まえ、今後、老朽管や配水池等の更新や耐震化など適正な施設の維持管理を計画的かつ効率的に実施していく必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、類似団体平均値は下回っているものの僅かに上昇傾向を示している。これは、施設全体の老朽化が進みつつあることを示していると言える。管路経年化率については、類似団体平均値は下回っているものの、年々数値は高くなっている。これは、石綿セメント管等の管路の更新を計画的に実施してきているが、昭和40年代後半に整備された管路が法定耐用年数を経過したことによるものと考えられる。管路更新率は、類似団体平均値を上回っており、近年は1%程度で推移している。本市は6つの浄水場と起伏のある複雑な地形に対応するため多くの配水池やポンプ場を保有していることから、管路だけではなくそれらの水道施設についても、耐用年数や施設の老朽化の度合並びに運転状況等を踏まえて計画的に更新を行う必要がある。
全体総括
単年度の経常収支は良好であると判断できるものの、人口減少や節水型機器の普及などによる給水収益の減少は、将来、財政面・施設運営面に対し様々な影響を及ぼすことが想定される。引き続き、経営効率化に努め費用の節減を図るとともに、安定的な収益の確保が重要と考える。今後、法定耐用年数を経過した施設などの老朽施設の更新には、多額の費用を要するため、経常収支の安定化や計画的な建設改良事業の執行、損益の黒字化等により資金の減少を招かないよう留意する必要がある。また、有収率の向上と更新財源の確保に努めるとともに、水道施設の計画的かつ効率的な更新を行う必要がある。