南アルプス市：簡易水道事業（法適用）

経営の健全性・効率性について

①経常収支比率では、平成23年度以降における大企業の事業縮小等の要因から、給水収益が大幅に落ち込み、投資的事業の補填財源となる純利益の確保に大きく影響を及ぼしている。②累積欠損金比率においては、欠損金は生じてはいないが、引き続き収益の確保、及び経費の削減を図っていく必要はある。③流動比率では、流動負債の未払金が例年より小額であったことが起因する平成24年度の特異値等、年度間に多少の変動はあるものの、年々流動資産（現金預金等）の減少を原因とする若干の右肩下がりの傾向にある。④企業債残高対給水収益比率では、類似団体との経年比較が5割ほど上回る値となっている。近年横ばいの値を保持してはいるものの、投資的な事業の財源として、これ以上の企業債に対する依存度を増すことは経営の健全性の面から危惧される。また、高い数値結果が示されていることは、経年的に適切な自主財源の確保（料金設定）がされていなかったとも判断できる。⑤料金回収率は、継続的に費用削減を図り、若干の改善傾向にはあるものの、平成23年度以降の大幅な給水収益の落ち込みにより、費用を賄う十分な収益が確保されているとはいえない。⑥給水原価は、経年・類似団体の比較からも、経常費用の効率性が図られていると評価できる。⑦施設利用率は、適正な施設規模の構築が図られていると評価できる。⑧有収率については、老朽化施設、管路更新の事業推進を年々実施している結果として、若干の改善傾向にはあるが、無収及び無効率を下げるべく更なる取り組みが必要である。

老朽化の状況について

①有形固定資産減価償却率をみると、平成22年度の33.81％から平成26年度の37.99％へと微増傾向にある。全国平均、類似団体平均と比較すると低い状況であるが、これから老朽化のピークを迎えることが読み取れる。②管路経年化率をみると、平成22年度から平成25年度までは、主に石綿セメント管の管路であり、約4.2％から4.7%でほぼ横ばいの状況であったが、平成26年度に管路全体の見直しを行った結果、塩化ビニール管の管路約8.8％が経年化した管路となり12.94%に増加した。全国平均、類似団体平均と比較すると高い状況である。③管路更新率をみると、平成22年度から平成24年度までは1％前後であり、類似団体平均以上で推移したが、平成25年度からは、浄水施設・設備の更新を行うために、管路の更新費用を削減した影響により減少している。全国平均、類似団体平均と比較すると低い状況である。老朽化の状況としては、全国、類似団体と同程度と思われる。しかし、管路の更新率が低いことから、今後、管路の老朽化が進行することが予測される。

全体総括

大企業の事業縮小、これに続く給水人口の減少、節水機器の普及による水需要の減少に伴い給水収益は減少傾向にある。一方、施設は、昭和30年代から施設整備が進められたことから更新時期を迎えつつあり、更新需要は増加傾向にある。これに対処するため、平成26年度にアセットマネジメントを実施し、施設のダウンサイジングを見込み、施設の重要度、優先度を考慮して延命化した更新時期の設定による中長期計画を策定した。今後は、この中長期計画に沿って、施設の更新を行っていくこととした。しかし、健全な事業運営を維持するためには、計画に基づいた財源を確保する必要があることから、現行料金の見直しを平成28年度に向け検討していく。併せて、有収率を向上させるため、老朽化した管路の更新促進、漏水調査の実施により、無効水量の減少を図る。