経営の健全性・効率性について
東京都大島町の水道事業は、供給した配水量の効率性を示す⑧有収率は、類似団体平均値をわずかに上回っていますが、ここ数年は低下傾向にあり、漏水量の増加が懸念されています。次に施設の効率性を示す⑦施設利用率は、季節毎の変動が大きいため類似団体平均値を下回る状況で横ばいで推移しており、施設の余剰感が顕著となっています。また、塩濃度の高い地下水を脱塩し、給水しているため、水1㎥を作る費用である⑥給水原価は、類似団体平均値より高く、費用を水道料金で賄っている割合を示す⑤料金回収率は、平成28年6月の料金改定により一時的に改善したものの平成30年度からはいわゆる原価割れの状態が続いています。一方で、①経常収支比率は、令和元年度より赤字経営に転じ、その蓄積である②累積欠損金比率も増加の傾向を示しています。この結果、累積欠損金の増加とともに、支払い能力を示す③流動比率は、類似団体平均値を大きく下回り、一般に安全圏とされる100%を切っていることから、支払い能力に課題が残っています。なお、債務残高の水準を示す④企業債残高対給水収益比率も類似団体平均値より高い状況であることから、運転資金をこれ以上の企業債の借入れで賄うことは難しいと思われます。このため、経営の健全化をめざし、漏水量の削減に向けた対策と令和4年6月に平均15%の料金改定を行う方向性であります。
老朽化の状況について
東京都大島町の水道施設は、地方公営企業会計制度の見直し後の令和3年度末時点で、有形固定資産の減価償却の進み具合を示す①有形固定資産減価償却率が類似団体平均値より高い約55%となっており、比較的減価償却が進んだ古い資産が多くなっています。これは、管路の経年化状況を示す②管路経年化率が類似団体平均値を超えて上昇を続けていることからも明らかであり、管路の老朽化が急速に進んでいることを物語っています。また、水道管の更新度合いを示す③管路更新率については、令和3年度に減少に転じ、引続き更新率を上げることが課題となっています。このため、平成30年度に策定した「管路更新計画」に基づき、管路更新事業に取り組んでいます。
全体総括
東京都大島町の水道事業は、平成28年6月の平均20%の料金改定により、一時的に経常収支の黒字化が達成されたものの支出の増加の速度に収入が追いつかず、多額の累積欠損金の残留と短期的な支払い能力の低下を招き、非常に厳しい経営状況にあります。その結果、優先施策の一つである老朽管の更新も総体的な流れと同様に管路の老朽化のスピードに対応できていないのが実情です。このような状況から脱却する方策として、早期の料金改定、令和4年6月に平均15%改定の実施や平成30年度に策定された「経営戦略」の見直し及び「管路更新計画」を着実に実行していくことが必要となっています。