経営の健全性・効率性について
経常収支比率については、100%を超えており黒字経営状況ではあるが、類似団体との比較では低率であり、収入の確保と費用削減を併せて行う必要がある。累積欠損金比率は、発生していない。流動比率は、類似団体平均値とほぼ変わらないが、単年度赤字累積による、累積欠損金が発生しないよう、経常収支比率と同様に収入の確保と費用削減が必要となる。企業債残高対給水収益比率が類似団体と比較して高率となっているのは、過去に浄水施設の全面改修を行ったことによるものであるが、償還原資を確保し返済計画に沿って償還しており、残高については減少傾向にある。料金回収率及び給水原価、施設利用率に関して類似団体平均値に比べて比較的大きな値の開きがあるが、これらは類似団体に比べ給水原価が高水準となっており経常費用の割合が大きいことによるものである。要因の一つとして、市内に4箇所の浄水場がありそれぞれが一定の割合の配水能力を持ち稼動しており施設の運営及び維持管理といった費用支出が考えられる。類似団体平均値程度に合わせた経営を行うには、経常的な経費削減と併せて、今後の給水人口減少を鑑み、施設の統廃合等も検討していく必要があるが、現行の基本的な考え方としては、寒波や大規模事故等による広範囲な漏水に対応する緊急時の余力部分といったプラス面と考えている。有収率は、経年配水管が影響の漏水が多く類似団平均値より低くなっているが、管路更新計画に沿った早急な対応を実施していくことが必要である。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については、平成27年度で47.73%となっており、ほぼ類似団体平均値と同等となっている。管路経年化率については、平成27年度19.48%となっており、水道事業創設の時期が早かったこともあり、類似団体平均値と比べて比較的大きな値の開きがある。管路更新化率については、類似団体平均値と比べて高率である管路経年化率を改善するため、管路更新事業に積極的に取り組んでいることから、類似団体平均値より比較的高率になっている。
全体総括
直方市水道事業は、毎年単年度黒字が続いており、累積欠損金は発生していない。しかし、管路を中心とした水道施設は老朽化が進んでいる。この状況を改善するため、管路の更新に積極的に取り組んでいるが、その財源の多くが企業債であり、このことが企業債残高対給水収益比率を押し上げている。今後は、国庫補助金や受託工事収益等の企業債以外の財源を積極的に活用し、管路更新を進めていく必要がある。また、老朽化した施設等の維持管理に多くの費用負担が発生するが、効率的な経営をさらに推し進め、修繕費、委託料、人件費、動力費、薬品費等の経常的な費用を削減することにより、より健全な企業経営及び財政の確立を目指す必要がある。