経営の健全性・効率性について
本市は、過去5年間において、経常収支比率(①)が100%を超えており、黒字経営である。長いスパンで経営状態を見るには、累積欠損金比率(②)を用いるが、こちらは0%を維持しており、健全な経営を継続できている。別の角度から経営状況を見るため、負債の規模も分析する。その指標として、流動比率(③)がある。短期的な資金の余裕を判断するもので、平成26年度以降、比率が大きく低下している。この原因は、新会計制度の適用により、企業債の償還分が負債に含まれたためである。本市の流動比率は、平成27年度においても100%を超えており、直ちに資金的な問題が生じる訳ではない。しかし、本市は類似団体より数値的に劣っており、比率も低下傾向にあるため注意が必要である。また、事業規模に対しての企業債(借金)の規模を示す企業債残高対給水収益比率(④)は、類似団体の半分以下となっているのが本市の特徴である。つぎに、水道料金に関する指標を見る。まずは、水道の供給に係る費用が水道料金収入で賄えているかを示す、料金回収率(⑤)である。この率が100%を超えていることから、水道の供給に係る収支で黒字を計上できている。一方で、給水原価(⑥)は類似団体の平均値よりも約62円高くなっている。この理由としては、コストの6割を占める受水費は削減できず、残り4割は削減可能コストであるが、減価償却費や人件費等の大幅なコストカットも直ちに実行することは困難であるからである。さらに、本市の有収率が低下傾向にあることも給水原価を高める一因となっている。
老朽化の状況について
管路経年化率(②)が平成26年度に比べて、大きく上昇しているのは、それまでの数値との算出方法の相違のためである。法定耐用年数を超えた管路に含める管路の範囲を見直し、平成26年度に比べて約17%上昇する結果となった。類似団体と比較すると、平均値よりも7.6%高く、本市は、より老朽化が進んでいることが分かる。また、管路更新率(③)も、平成27年度の更新率が大きく伸びているのは、平成26年度までの数値の算出方法との相違が原因である。平成26年度までは、石綿管のみの更新延長で算出をしていた点を改め、すべての管路の更新延長で算出した。平成27年度において本市は、類似団体の約2.8倍の更新率をマークしているが、すべての管路を更新するには50年を要する。本市の管路経年化率が類似団体より高い状態にあることを勘案すれば、高い更新率を維持していく必要がある。
全体総括
管路経年化率が高いことから、本市の水道施設の更新需要が、かなり高まっていることが分かる。今後も安定した水道供給を維持するには、適宜更新していく必要がある。しかし、設備投資は減価償却費や支払利息の増に繋がり、それらは経常収支比率を悪化させることにもなる。健全な経営を維持しつつ、設備更新を継続するには、両者のバランスが重要となる。そのためには、第一に、経営コストの削減に努める必要がある。業務の外部委託等の検討を引き続き行い、目標を達成したい。第二に、設備更新のコストの削減を図らなければならない。平成25年度に策定したアセットマネジメント計画に基づき、更新必要箇所をよく見極めることで、設備更新を最適化できると考える。加えて、広域化もそのためのひとつの方法だと考え、実現に向けて積極的に検討していきたい。