経営の健全性・効率性について
経常収支比率は前年度とほぼ同じ数値で100%を上回り、累積欠損金もなく、料金回収率についても経常収支比率と同様の動きを呈し、比較的健全な水準を維持している。変動要因として、大型小売店舗の休止、個人の水需要低迷傾向による収益の悪化、退職給付引当金、電気料金値上げ等による経費増がある。また、給水原価は前年度に引き続き、平均値を大きく下回った。しかしながら、実態としての経営状況が改善されたとは言えず、会計制度の改正の影響が大きい。特に給水原価は、みなし償却制度が廃止され、長期前受金戻入という現金を伴わない収益が発生したことで、積算方法が変更したため。経営環境としては、減価償却費から相当分の長期前受金戻入を差引くことで従前よりも経費数値が低く算出されるため、財務諸表上では黒字(純利益)要因となり、経営状況を判断する上では注意が必要である。施設利用率は認可変更(平成25年度実施)による施設能力の見直しで向上、有収率は平均値を上回り、施設の運用効率は高いとみることができる。流動比率は前年度に数値が大きく変化したのは、借入資本金制度の廃止により、企業債が流動負債に計上されたためである。企業債残高対給水収益比率は右肩下がりで減少し、平均値も下回った。これは平成22年・23年度に行った高利率の企業債の借り換えである公的資金補償金免除繰上償還の実施と、毎年の償還と借入のバランス確保により、企業債残高が減少したためである。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率はほぼ平均値であり、他の事業体と比べて資産の老朽化の度合いは平均的な状態である。管路経年化率については、徐々に右肩下がりの傾向にあるものの、平均値を上回っており、管路の老朽化が進んでいる状態である。これは法定耐用年数を経過した管路を多く保有し、管路の更新等の必要性を推測することができる。管路更新率については前年度の1.5倍の数値であり、平均値も大きく上回っていることから、更新ペースは比較的進んでいるといえる。しかしながら現状の1%ペースの状況ではすべての管路を更新するのに100年かかる見込みである。
全体総括
前年度と同様に、現時点での経営の健全性・効率性は概ね確保されているといえる。しかしながら、人口の減少や節水型の機器の普及などによる水需要の減少傾向は続いており、それに伴う給水収益も右肩下がりの状況が続いている。他方、水需要の急増に対応し、昭和40年代から50年代に整備された水道施設や管などの老朽化が進んでいる。このような状況の中、急激な悪化を回避するため、資産の修繕などの効果的な延命措置と更新のバランスを取りながら経営してきたが、今後もまだまだ耐震化を含めた更新すべき施設が残されている状況である。大規模な更新投資を行う必要がある中で、当面の事業に対して、交付金・地方債・出資金を更新財源として取組む。また、平成28年度中には施設総合整備計画を策定し、将来の更新需要を予測し、さらに平成29年度中にはそれらに係る収支計画を精査し、経営戦略を策定する予定である。