経営の健全性・効率性について
①経営収支比率:前年度比1.37ポイント減の107.58%となり,100%以上となっているものの,全国平均及び類似団体と比較して低い数値となった。収入の根幹である給水収益については,人口減少と共に減少傾向にあり,一般会計からの繰入金に依存している状況である。今後は,給水収益の確保に努めるとともに営業費用の削減などの経営改善を図っていく必要がある。③流動比率:前年度比46.52ポイント増の344.63%となり,全国平均は上回ったものの,依然として類似団体と比較してやや低い数値となった。水準並みに大幅に増となった理由としては,資金運用のため有価証券を購入したことにより流動資産が増となったことが主な要因である。④企業債残高対給水収益比率:前年度比3.65ポイント減の366.72%となり,類似団体と比較してやや下回ったものの,全国平均と比較すると大幅に上回った。これは,統合前の簡易水道地域の建設改良工事の財源として多額の企業債を発行したことが要因である。今後は企業債の発行を元金償還額以下に抑制するなど,経営健全化を図っていく必要がある。⑤料金回収率:前年度比1.41ポイント減の95.48%となり,全国平均及び類似団体と比較し低い数値となった。簡易水道統合前は100%を上回っていた事からも,旧簡易水道地域の給水に係る費用が経営を圧迫していることが分かる。⑥給水原価:前年度比2.16ポイント増の229.69円となり,全国平均及び類似団体と比較して高くなった。これは有収水量に対して経常費用の割合が大きいことが要因であり,今後は管路の老朽化対策などにより有収率の向上に努め,経常費用の削減を図っていく必要がある。⑦施設利用率:前年度比2.03ポイント減の77.25%となり,全国平均及び類似団体と比較して高くなった。しかしながら,急速に進む人口減少を踏まえ,具体的な施設の更新計画と合わせてダウンサイジング等も視野に入れながら,効率の良い水道事業の運営に努める必要がある。⑧有収率:前年度比0.15ポイント減の62.08%となり,全国平均及び類似団体と比較して著しく低い数値となった。老朽管路の漏水が原因であり,日々の配水流量の増減を分析するなど,早期の発見・修繕に努めてはいるものの,給水エリアが広範囲であることなどから,大きな改善が見られない状況である。現在はさらに詳細な分析を行いながら特命プロジェクトチームを結成するなどし,漏水発見に取り組んでいるところである。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率:前年度比1.32ポイント増の51.73%となり,全国平均及び類似団体と比較し,やや高い数値となった。これは法定耐用年数に近い資産が多いことが要因であり,計画的な更新に努めていく必要がある。②管路経年化率:前年度比9.1ポイント増の20.18%となり,全国平均及び類似団体と比較し,やや高い数値となった。法定耐用年数を超えた管路の割合を示す数値であり,増となった主な要因は,合併前の旧町村での管路布設の時期が重なったことにより更新時期が同時期に到来したことなどが考えられる。今後は財政計画と合わせて,可能な限り財源を確保しながら,計画的な更新に努めていく必要がある。③管路更新率:前年度比0.16ポイント減の0.89%となったものの,全国平均及び類似団体と比較して,著しく高い数値となった。平成28年度に策定した「常陸大宮市水道事業経営戦略」の中でも,管路更新率1.0%を目標に掲げており,計画的な更新に努めてはいるものの,多額の更新費用に対する財源の確保や,工事の発注業務に関わる人材の育成なども今後の課題となっている。
全体総括
経常収支比率が100%を超えており,経営の健全性については,一定の数値を維持してはいるものの,今後は急速に進む人口減少に伴い,給水収益も減少することが予想される。一般会計からの繰入金に依存している現状ではあるが,一方では独立採算の観点から,自主財源の確保を求められおり,今後の経営状況の見通しは厳しいものとなっている。そのような現状を踏まえ,令和2年度には「水道ビジョン」と「経営戦略」を包含した中長期的な基本方針となる「水道事業経営計画」を策定し,実効性のある経営改善に取り組んでいるところである。給水収益の確保や施設・管路の老朽化対策など様々な課題を抱えている中で,特に早急な対策を講ずる必要があるのが有収率の向上である。有収率については近年,全国平均等と比較しても著しく低い60%台となっており,有収水量に係る動力費や薬品費などの経常費用が必要以上に支出されており,財政を圧迫している現状である。老朽管路の更新とともに,積極的な漏水修繕に努めてはいるものの,給水エリアが広大であることなどから数値の向上が見られない状況であるが,今後も様々な方策を模索し,工夫を凝らしながら取り組んでいく考えである。