経営の健全性・効率性について
宍粟市における給水量の内訳では、大企業や工場の数が少なく、給水口径20ミリ以下の生活用水道の利用率が高いことから、有収水量が類似団体と比べて少ない傾向にある。また、給水区域は広大で、かつ山間部に位置することから、多数の浄水場と配水池を保有する必要があり、施設整備に多額の費用を要し、資本費が類似団体と比べても高くなっている。以上2点の地域特性から、経営効率が悪くなり、維持管理費の節減の取組について一定の効果は見られるものの給水原価が293.63円/と比べて著しく高くなっており、近隣団体と比べて高い料金を設定しているにもかかわらず、経常収支比率は87.7%と100%を割り込んでおり、収支の赤字が続いている。また、平成26年度には規模の大きな簡易水道事業を統合した(平成25年度有収水量旧上水2,129千.に対し旧簡水1,555千.)が、簡易水道事業の施設整備においては、その財源の多くに企業債を充当していたことで、企業債残高対給水収益率も類似団体平均の2.6倍と非常に高い水準となっていることも今後の経営の健全性にとっての大きな課題である。
老朽化の状況について
施設の老朽化は進んでいるが、管路については比較的新しいものが多く、管路経年化率は低い。給水区域が広大で保有資産も多く、今後その更新に際し莫大な費用を要することとなる。旧簡易水道区域においては国庫補助を活用して老朽機器更新事業を実施していたところ、上水道に統合したため、今後の補助は見込めない状況であることから、より一層効率的な施設更新を実施しなければならない。施設と管路の長寿命化、更新に合わせた統廃合やダウンサイジングの検討などにより、更新費用の低減化を図る必要がある。
全体総括
生活用水道の利用率の高さを要因とする有収水量の少なさと、地理的要因による資本費の高さが、経常収支比率の悪化を招いているが、今後の有収水量の増加は難しいことから、経営状況はより厳しくなっていくものと考えられる。将来にわたって安定的に経営を継続するため、引続き費用の抑制に努めるとともに、民間委託や広域化について情報収集と検討を進めながら経営の効率化・合理化に取り組む必要がある。料金水準についても、急激な負担増加を避けつつ、近隣団体とのバランスも考慮しながら検討を行い、適切な料金改定を実施することで、収入を確保しなければならない。以上、費用の抑制と収入の確保を併せて実施していくことで、令和3年度に策定した『宍粟市水道ビジョン』に掲げている経営黒字化を実現したい。