経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、平成29年度の簡易水道事業統合後に低下後、令和2年度までは徐々に回復していたが、令和3年度に比率が下降した。この要因はコロナ対策として4ヶ月の料金減免分が100%一般会計からの繰入金で補填された令和2年度と比較して、令和3年度は、修繕費や委託料等の経常費用が増加したことによるもので、結果として前年度比で6.24ポイントの減となった。類似団体平均より低くなっているが、過去5年間の単年度収支は100%超を維持しており、累積欠損も発生していない。また、流動比率は継続して1,000%を上回っているため、短期的な資金繰りについて大きな問題はないと考えられる。今後も、一層の収入の安定確保、維持管理費用の削減に努めていく必要がある。企業債残高対給水収益比率は、借入金に頼らず企業債の償還が進んでいることから比率は徐々に減少傾向である。類似団体と比較しても借入金への依存度は低いことから、比較的健全な経営状況であると考えられる。料金回収率は100%を下回り、事業に係る経費が給水収益により賄われていないことが表されているが、経営努力により上昇している。令和2年度の急落はコロナ減免による給水収益の減によるものであり、令和3年度は類似団体平均に近づいており、大きな問題はないと考えている。給水原価は、以前から類似団体平均値より高くなっており、経営努力により徐々に下げるよう努めていきたい。施設利用率は類似団体平均値より低く、効率的な施設利用ができていない可能性があるため、今後の管路更新にはダウンサイジングも視野に入れて検討する必要がある。有収率は、微小な範囲で増減しており、今後も管路の維持管理や更新により有収率向上に努めていく必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は過去5年間の水準に大きな変化は無いが、類似団体平均を上回っており、固定資産の老朽化が比較的進んでいることが読み取れる。管路経年化率の令和3年度の急伸は、水道ビジョン策定により精査した結果であるが、類似団体平均値を上回っており、ここでも老朽化が進んでいることが読み取れる。管路更新率は直近年度で減少傾向にあり、令和元年度には0.1%まで下がった。類似団体平均も大きく下回っており、令和2年度以降管路更新を進めているが、今後の更新投資も計画的かつ積極的に検討する必要がある。これらの指標から、今後はより一層の計画的な更新が必要であり、それに伴う更新投資等に関する支出は増加せざるを得ないと考えている。
全体総括
平成29年度に簡易水道事業を統合したことが、特に経常収支比率、料金回収率、給水原価に影響を及ぼしたが、徐々に経営努力により改善してきた。今後もこのような水準が継続していくことが予想され、老朽化の状況から、計画的な管路更新を進める必要があり、それに伴う更新投資の増加が今後の経営に影響することは明らかである。投資額を極力抑えるために、管路や施設等の長寿命化、ダウンサイジングを視野に入れ計画立案することが重要であると考える。財源面においては、長期的な視点から、料金水準や経費の見直しを含め、投資財源の確保について時期を見誤らないよう検討することが重要であると考える。