経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、平成29年度の簡易水道事業統合後に以前の水準まで低下、平成30年度において僅かに回復した。類似団体平均よりは低いが、過去5年間の単年度収支は100%超を維持している。また流動比率は、平成30年度も1,000%を若干上回り、過去5年間、平成27年度を除き1,000%を上回っているため短期的な資金繰りについて大きな問題はないと考えられる。企業債残高対給水収益比率は低い水準で推移していたが、簡易水道事業を統合したことにより、平成29年度においては、100%を超えた。ただ、簡易水道に係る企業債の元利償還金の一部は一般会計の負担も予定されていること、類似団体と比較しても借入金への依存度は低いことから、現時点では比較的健全な経営状況であると考えられる。料金回収率は平成29年度で100%を下回り、事業に係る経費が給水収益により賄われていないことが表されたが、平成30年度は経営努力により僅かに上昇した。給水原価も以前より類似団体平均値より高くなっていたものが、平成29年度以降さらに高くなっており、簡易水道事業を統合したことによる影響が数字となって表れたと考えられる。施設利用率が類似団体平均値より低く、効率的な施設利用ができていない可能性があるため、今後の管路更新にはダウンサイジングも視野に入れて検討する必要がある。有収率は平成30年度では上昇したものの、今後も管路の維持管理や更新による有収率向上に努めていく必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は過去5年間の水準に大きな変化は無いが、類似団体を上回っており、固定資産の老朽化が比較的進んでいることが読み取れる。また、簡易水道事業との統合により、管路経年化率が平成29年度以降は減少し、類似団体平均値の水準に近づいたものの、耐用年数を超えた管路が15%程度ある状況で、ここからも老朽化が進んでいることが読み取れる。管路更新率は平成27年度をピークに減少傾向にあり平成30年度は0.6%まで下がっている。類似団体を上回っているものの、これでは、固定資産の取り替えに100÷0.6=166年かかるということになり、今後の更新投資の増額を検討する必要がある。これらの指標から、今後はより一層の計画的な更新が必要であり、それに伴う更新投資等に関する支出は増加させざるを得ないと考えている。
全体総括
平成29年度に簡易水道事業を統合したことが、特に経常収支比率、料金回収率、給水原価に影響を及ぼしていると考えられ、今後はこのような水準が継続していくことが予想される。また、老朽化の状況を見ても、計画的な管路更新を進める必要があり、それに伴う更新投資の増加も経営に影響することは明らかである。投資額を極力抑えるために、管きょや施設等の長寿命化やダウンサイジングを視野に入れ計画立案することが重要であると考える。財源面においては、長期的な視点から料金水準や経費の見直し、企業債の発行をどの程度の水準とするかを含め、投資財源の確保について時期を見誤らないよう検討することが重要であると考える。