経営の健全性・効率性について
経常収支比率は黒字を維持しているものの,類似団体の平均値を下回っている。有収水量及び給水収益はほぼ横ばい傾向であり,加入金及び補助金等の営業外収益の増減が事業経営を大きく左右するなかで,平成30年度は加入金の減少及び補助金が大幅に減額になったことが経常収支比率の悪化の主な要因といえる。料金回収率も類似団体の平均値を下回っており,費用節減等の経営効率化を図るだけでなく,料金収入を確保するため水道料金の見直しを検討する必要がある。給水収益に対する企業債残高の割合は,拡張工事に係る企業債の償還が進んでいることから,類似団体の平均値を下回っている。しかしながら,施設・管路の老朽化から有収率が年々低下している状況で施設及び管路の更新需要が増大するなか,将来的に給水収益の増加が見込めないため,管路更新の財源確保のための企業債の借入を増やさなければならない状況となっている。また,給水原価が類似団体の平均値を上回っていることについては,水源のうち自己水源よりもコストの高い浄水受水の割合が約60%を占めていることが要因として挙げられる。その自己水源である5本の井戸のうち3本は代替水源が確保されるまでの暫定井戸であるため,代替水源の受水が開始した場合は更なる給水原価の上昇が見込まれる。
老朽化の状況について
昭和48年に水道事業を創設して以来40年以上経過しており,創設当初に布設した管路が多く占めるため,経年化率は平均値と比べ高い数値を示すとともに,有形固定資産減価償却率も平均値より高い数値を示している。今後も経年化率の更なる上昇が懸念されるが,管路更新率は平均値と比べて低い数値を示している。その主な要因として,管路の更新には多額な費用を要することの他に老朽化した浄水場施設の更新を同時に実施していることがあげられる。
全体総括
人口減少及び大口需要者の地下水への転換に伴う有収水量の減少傾向に伴い,将来の給水収益の減少が予測される。同時に,暫定井戸から受水への転換が間近であることから,受水に係る費用が大幅に増加し,収支がさらに悪化することが見込まれる。また,経年化が進んでいる施設・管路の更新も急務であり,その財源の確保も喫緊の課題である。そのような状況の中、将来にわたり水道サービスの提供が安定的に継続できるかどうかを検証するため、中長期の財政計画である水道事業経営戦略を策定する予定である。