経営の健全性・効率性について
単年度収支が黒字であるため,経常収支比率は100%を超えており,また,累積欠損金は生じていない。流動比率は,全国平均,類似団体平均を大きく下回っており,建設改良費等に充てた企業債の償還費用の負担が大きく,手持ち資金が少ないことが影響している。このことは,企業債残高全体を見ても,企業債残高対事業規模比率が平均値を上回るという結果に表れている。この傾向は,当面続くことが予想される。経費回収率は,100%を若干下回っているため,使用料収入の増加や汚水処理費の削減を通じて,当該値の上昇,汚水処理原価の減少に努めていく必要がある。施設利用率は,全国平均,類似団体平均を上回ってはいるが,法適用前年度に水処理施設の増設を行ったことが影響している。水洗化率は,全国平均,類似団体平均を若干下回るものの,戸別訪問等により,今後も水洗化普及に努めるとともに,投資効果のある効率的な下水道整備を進めていく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は,全国平均,類似団体平均を大きく下回っているが,これは法適用2年目であることが大きな要因であり,今後,急激に当該値の上昇が予想される。管渠老朽化率は向こう5年の間に上昇するため,令和7年度以降,本格的な老朽化対策の着手を予定している。
全体総括
維持管理費の抑制に努めており,損益は黒字となっているが,長期前受金戻入を控除した減価償却費を企業債償還費から準建設改良費を控除した額が大きく上回っていることから,資本的収支補填財源に利益剰余金を使用するほかなく,更には,法適用前に借入れた資本費平準化債などの企業債償還費が重荷となり,キャッシュフローは厳しい状況が今後も継続していくことが予想される。設備投資面では,近年多発している大雨による浸水被害への対策として,雨水管きょの整備を推進していることから,今後,これに伴う雨水処理費が増加していくことが予想される。また,処理場ではストックマネジメント計画及び総合地震計画に基づく計画的な老朽化・地震対策を推進しており,今後資本費の増加が予想される中,使用料収入とのバランスを見つつ,効率的に汚水処理に係る未普及地域解消を促進する必要がある。