経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、下水道使用料等の収益で維持管理費や支払利息等の費用をどの程度賄えているかを表す指標である。令和3年度は133.67%となり、単年度収支が黒字であることを示しているものの、この収益の中には営業助成のための一般会計補助金が含まれていることに留意する必要がある。②累積欠損金比率は、欠損金がないため、0となっている。③流動比率は、債務に対する短期的な支払能力を表す指標である。令和3年度は100%を超えている。④企業債残高対事業規模比率は、南畑地域を中心に下水道整備を重点的に進めていることから、他団体との比較で企業債残高が大きい。平均値との乖離の原因は、整備箇所区域の人口密度の小さいことに由来しており、将来的な需要を見据え、適切な投資量を検討する必要がある。⑤経費回収率は、使用料で回収すべき経費をどの程度使用料で賄えているかを表す指標である。特定環境保全公共下水道の対象区域は人口密度が小さく、使用料収入だけで経費全般(主に資本費)を賄うことは難しいものの、水洗化率の向上等による下水道使用料の増収と、不明水の削減等よる維持管理費の削減に力を入れていく必要がある。⑥汚水処理原価は、有収水量1.あたりの汚水処理に要した費用を表している。当市では、汚水処理原価が150円/.を超過する費用相当額に対し一般会計から繰入れを行っているため、汚水処理原価が昨年度と同値になっている。繰入を加味しない汚水処理原価は283.75円/.であり、経営改善が求められる。⑧水洗化率は、処理区域内人口のうち、実際に公共下水を利用している人口の割合を表す指標である。直近で下水工事を実施した地域では、未接続世帯が多いことが考えられるため、「⑤経費回収率」の向上と関連し、水洗化促進活動を推進することが必要である。
老朽化の状況について
当市の特定環境保全公共下水道事業は昭和55年度から開始されている。法定耐用年数(50年)を経過した管渠はまだ無いものの(②管渠老朽化率が0)、①有形固定資産減価償却率が同規模団体の平均を上回っていることから、比較的老朽化が進んでいることが分かる。今後は、令和2年度に策定したストックマネジメント計画に基づき、計画的かつ効率的な改築更新を進めていく予定である。
全体総括
当市の経営状況を各指標から総合的に分析をすると、単年度収支で黒字を達成しつつも経費回収率は100%を下回っており、赤字額を一般会計の補助金で補っているという経営状態である。当市の特定環境保全公共下水道事業は公共下水道事業と比較すると、対象区域の人口密度が小さく、一世帯あたりの事業費が大きくなる傾向にあるため、経営の効率性を高めることで、採算性を改善していくことが求められる。しかし、近年は台風や集中豪雨等に伴う不明水の発生により汚水処理費が増加することや、人口減少や節水等による収入の低下が懸念される。それに伴い、令和2年度に当市はストックマネジメント計画および経営戦略策定を策定した。ストックマネジメント計画においては、今後の改築更新スケジュール策定や投資額を推計しており、その計画に沿うように今後は更新事業に着手していく。また、経営戦略においては更新事業費や維持管理費等、増大する支出に対して、収入が均衡するよう、収支計画のシミュレーションと今後の経営方針を定めている。今後は経営戦略に基づき、滞りなく事業を遂行できるよう、経営基盤の強化を図っていく。