経営の健全性・効率性について
①経常収支比率、⑤料金回収率については、100%を上回り、27年4月からの水道料金改定によって経営状態が改善している。しかし、会計基準の見直しによる影響も大きく、長期前受金戻入のうち、従前は出資金に計上していた簡易水道事業債元金償還金に対する基準内繰入金の収益計上で、実態よりも経営状態はよく見えている。②累積欠損金比率は、27年度同様に0%である。③流動比率は、25年度を除き、平均値を下回っている。25年度は建設改良事業の繰越等により流動負債(未払金)が減少したため数値が高い。④企業債残高対給水収益比率は、類似団体と比べて高い数値で推移していることから、企業債への依存度が高く、今後の企業債償還が経営の負担となることが予想される。27年度以降は料金改定による収益の増加で低下している。⑥給水原価は、平均値より低く推移しており、類似団体より安価な経費で運営している。⑦施設利用率は概ね50%程度で推移しており、施設数が多いため、個々の余力分の積み重ねも影響しているが、全体的な給水量の減少傾向が大きな要因である。⑧有収率は平均値より低く、管路の老朽化による漏水および災害などによる本管からの直接給水の増加が原因と考えられる。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率が、26年度以降急増しているのは、会計基準の見直しに伴うみなし償却制度廃止による減価償却費の増加が原因である。27年度と同様に28年度も類似団体の平均とほぼ同じとなっている。②管路経年化率は、類似団体よりも高く、増加傾向にあることから、更新時期を迎えた管路が今後も増加していくことが懸念される。一方で③管路更新率は、類似団体より低位で推移しており、管路の更新は進んでいない。
全体総括
当市は、類似団体と比較し、経営状況が良好とはいえない。これは、市内には44の水道施設が広範囲に点在しており、地理的にも大規模な統合は難しく、経営の効率化を阻む要因となっている。また、人口減少や節水意識の浸透により、有収水量の増加も見込めない状況である。こうした背景から、27年4月から料金改定を行い、収支改善に取り組んでいるが、耐震化や老朽化施設の更新等を考えると、さらなる料金改定は不可欠と考えられる。計画的な更新を実施するためにも、老朽化の現状等の適切な把握に努め、次期の水道事業基本計画策定(30年度予定)においては、給水量の減少傾向を見据え、水需要に応じた適正な施設規模の更新を進めるとともに、更新時の財源が確保できていないことから、料金改定についても定期的な見直しを行っていく。