経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は100%以上で推移し、適切な水準である。しかし、経費回収率が60%にも満たないことから、主に一般会計からの補てん財源で賄っているのが現状であり、更新費用の確保を十分に行えていないことが今後課題となってくる。それでも、下水道事業の持続運営のため今後も収支バランスは黒字を維持する必要がある。②累積欠損金比率は0%を下回り、健全な状態にある。③流動比率は100%を下回り、類似団体平均値より大幅に低い。企業債償還金が負債の大部分を占めていることから支払い能力が無いというわけではないが、更新費用の確保という観点から、今後は適切な使用料の水準を確保し、経常利益を着実に確保する必要がある。④企業債残高対事業規模比率は類似団体平均値よりも高い水準にある。本市の営業収益が類似団体と比較して少ない割に比率が類似団体平均よりも高いということは、これまでに過度な投資を行った可能性があるため、今後は中長期的な視点で最適な投資規模及び適切な使用料水準の確保を検討する必要がある。⑤経費回収率は58.68%で類似団体平均値と比較して大幅に低い水準にある。汚水処理費の約4割を一般会計からの補てん収入で補い事業経営を維持している状況をうけ、使用料増額改定を行う予定である。段階的な増額であることから、大幅な改善はすぐにはできないが、今後も経費の節減や経営の効率化に努めるとともに、下水道接続促進や料金の適正化に継続して取り組む必要がある。⑥汚水処理原価は類似団体平均値並みであり、適切な水準であるが、昨今の物価高騰等社会情勢の変動に影響されやすい部分もあり、また、施設の老朽化により維持管理費の増加が予測されることも踏まえ、今後はより一層の効率的・効果的な下水道整備が重要となる。⑦施設利用率は類似団体平均値より高い利用率となっており、施設の利用状況や規模は適正な水準にある。今後も不明水量の把握及び不明水の改善対策に取り組み、施設への負荷軽減に努める。⑧水洗化率は全国及び類似団体平均値より低い水準にある。昨年度よりも減少した背景として、水洗化人口の伸び数よりも処理区域内人口の伸び数が大きかったことからであり、水洗化人口は着実に伸びている。また、水質保全の観点からも今後も継続して接続促進に取り組む。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は6.89%と類似団体平均値よりも低い。これは、供用開始が類似団体よりも遅いためであり、今後数年は類似団体平均値よりも低いと予想されるが、減価償却率の伸び率が類似団体平均値よりも大きいことから、将来は平均値程度になることが予想される。➁管渠老朽化率は0%となっているが、昭和49年の供用開始以来、順次管路が法定耐用年数(50年)を迎え、老朽管渠率は増加していくことが見込まれる。③管渠改善率は0.1%と類似団体平均値よりも低い。今後は順次管渠が法定耐用年数を迎え、老朽化が進行することが見込まれることから、ストックマネジメント計画に基づく修繕・更新計画(R4年度予定)を策定し、計画的に老朽管渠の更新を行う。
全体総括
本市は、類似団体平均値と比較して全体的に経営の健全性を表す指標が類似団体平均値より低く、特に流動比率・経費回収率が大幅に低い。施設規模に対する使用料収入の割合が類似団体や近隣市町村と比較しても低く、適切な使用料水準の確保が課題であることから、令和4年度に使用料の増額改定を行う。それでも財源の十分な確保には至らない試算であることから、中長期的な視点で適切な使用料水準の確保に向けて今後も取り組む必要がある。同時に、収益基盤の強化の観点から水洗化率の向上、施設利用率の改善(不明水対策)など幅広く健全経営及び経営効率化に取り組む必要がある。そのため、平成30年度に策定した経営戦略について、ストックマネジメント計画を踏まえた見直しを令和7年度までに行うこととし、経営戦略に基づいた効率的な事業運営を行っていく。