経営の健全性・効率性について
本市の公共下水道事業においては、地方債残高が依然として高い水準にあり、この償還に要する費用が大きな負担となっている状況にある(④企業債残高対事業規模比率)。地方債償還金が汚水処理原価を押し上げるため、経費回収率が低くなり、経営の効率性を低下させているといえる。⑥汚水処理原価は、類似団体と比べて高額となっている。汚水処理原価(平成25年度値)の内訳を見ると、類似団体平均は47.2%が維持管理費、52.8%が地方債償還金であるのに対し、本市では36.3%を維持管理費、63.7%を地方債償還金が占めている。地方債償還金が多額となった理由として、昭和末期から平成初期に集中的に実施した工事に多額の地方債を発行したことのほか、地理的要因として地下水位が高く難工事が多くなったため、工事費が高額となったことが挙げられる。⑤経費回収率は、わずかに改善傾向にあるものの、類似団体平均以下の値で推移している。①収益的収支比率は、100%に遠く及ばない。総費用を使用料収入で賄うことができず、総収益の約48%を一般会計繰入金に依存し、地方債償還には資本費平準化債の発行が不可欠となっている。⑦施設利用率は約60%で推移しているが、将来の集落排水区域からの一部統合を前提としていることから、施設の規模は適当と見ている。⑧水洗化率については、汚水管の面整備が概ね完了した中、接続が順調になされ、平成24年度以降は類似団体平均を上回っている。
老朽化の状況について
本市では昭和58年度に公共下水道事業に着手したのち、平成2年度から順次、供用を開始し、汚水管の面整備は概ね完了した。管渠の耐用年数は約50年で、更新時期はまだ到来しないため、③管渠改善率は0%となっている。一方で、処理場の機械・電気設備については更新時期を迎えたことから、平成27年度から長寿命化計画の策定に取り組んでいる。平成28年度には機械・電気設備の長寿命化対策検討と沈砂池管理棟などの耐震診断を行う予定である。今後は、更新時期を見据えながら、予防保全型の計画的な維持管理を実施するとともに、長寿命化対策を含めた効率的な維持管理に努める。
全体総括
経営の健全化のためには、地方債償還金の負担が最大の課題であるが、固定的に必要とされる費用であり、短期間での削減は難しいことから、維持管理費の削減と使用料収入の増加を図る必要がある。維持管理費については、処理場の運転管理業務に包括的民間委託の導入を検討するなど、徹底的な抑制に努める。使用料は、既に全国的に見ても高い水準となっているが、今後は人口減少等による使用料収入の減少が見込まれるため、下水道への接続を促す啓発や不明水調査を実施するなど、有収水量を増加させる取組を継続していく。また、平成27年9月から収納等業務を民間に委託しており、徴収率向上対策の強化を図る。将来にわたり安定したサービスを提供できるよう、収支の改善等を通じて経営基盤の強化を図り、経営の健全化に努める。