経営の健全性・効率性について
経常損益を表す経常収支比率は100%以下の指標になると単年度収支が赤字であることを示すが、本市では表①の指標のとおり、過去5年間100%を下回ったことはない。平成25年の102.76%が最低値、平成27年度においては111.73%と類似団体平均値より、2.09%高くなっている。なお、平成27年度決算においては、当年度未処分利益剰余金(純利益)が66,305,776円となっている。累積欠損金については欠損金が発生していることを示す指標である。表②のとおり過去5年間0%となっており未発生である。また、1年以内に支払うべき債務に対して支払金の準備があるかどうかを示す指標である流動比率は、表③のとおり過去5年間100%を下回ることはなく、平成27年度においては類似団体平均値をやや上回った380.18%となっており、支払い能力に余裕があることを示している。企業債残高対給水収益比率については、表④が示す指標のとおり類似団体平均値より高い数値を示しているが、今後の企業債償還に要する経費については既に計画的に財源が確保されている。給水原価については、過去5年間145円~160円で推移しており、類似団体平均値より約25円程度低い経費をもって給水している。料金回収率については、平成27年度109.82%であり、100%を9.82%上回っている。給水に係る費用が給水収益で賄えられていることを示している。以上の指標から本市の経営については、概ね健全経営が維持されいる状況にあると考えられるが、さらに一層の健全経営に努めなければならない。次に施設利用率については、一日配水能力に対する一日平均配水量の割合であり、施設の利用状況や適正規模を判断する指標である。平成22年には66.63%、平成27年度には59.81%と下降傾向であるが、表⑦のとおり類似団体平均値と比較しても施設を効率よく使用しており、適正規模であると考えられる。さらに、施設の稼動が収益につながっているかどうかを判断する指標である有収率については、表⑧のとおり過去4年間数値が上昇傾向にあったが、平成27年度は前年度に比較し0.82%減少した。しかし、平成27年度においても類似団体平均値を6.28%上回っている。以上前2項目の施設に関する指標から本市の水道施設については、適正規模であると考えられ、効率良く収益に反映していると考えられる。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については、資産の老朽化の度合いを示す指標である。100%に近いほど老朽化が進んでいる状況を示している。本市については表①のとおり指標が類似団体平均値を過去5年間下回っており、平成27年度においては、39.76%と平均値より5.99%低い数値である。類似団体との比較においては、保有している資産が法定耐用年数に近づいている割合が低いと考えられるが、指標を参考に将来の施設の更新等の必要性と財源の確保に留意したい。管路経年化率については、表②のとおり法定耐用年数を越えた管路はなく該当なしである。管路の更新投資の実施状況である管路更新率については、表③のとおり過去5年間の類似団体平均値と比較してみると、平成25年度、平成26年、平成27年は平均値を越えた管路更新の実績となっている。耐震化の対応と併せ今後積極的な整備に取り組む計画である。
全体総括
本市の上水道事業における財政状況については、経常収支比率、総収支比率は100%以上で黒字経営となっており、健全経営を維持している。水道施設の整備及び運用稼動状況についても収益性との関連において適正対応と考えられる。本市では簡易水道実施区域内の一部地区(上灘地区)について、上水道事業に統合するため、簡易水道統合整備事業を実施中である(平成29年度統合予定)。統合後は、健全で安定した経営に取り組む必要がある。また、今後は老朽化した既存施設の更新等、資本投資の増加が見込まれることから、効率的な経営に一層努めると共に、人口減少に伴う水道利用収益の減少などに対応するため、合理的な料金設定を図るなど、財源確保に努める必要がある。