経営の健全性・効率性について
経常収支比率は黒字を維持しているが,平成27年度は類似団体の平均値を下回っている。給水収益は前年度に比べ微増ではあったが,加入金収入の減少により水道事業収益が減少した。その一方で水道事業費用のなかでも配水及び給水に係る費用が増加した。その主な要因として管路の漏水等に起因する有収率の低下が第一に考えられる。給水収益に対する企業債残高の割合は,拡張工事に係る企業債の返還が進んでいることから,類似団体の平均値を下回っている。しかしながら,施設・管路の老朽化から有収率が年々低下している状況で施設及び管路の更新需要が増大するなか,人口減少等により将来的に給水収益の増加が見込めないため,管路更新の財源確保のため企業債の借入を増やさなければならない状況になりつつある。また,給水原価が類似団体の平均値を上回っているが,水源のうち自己水源よりもコストの高い浄水受水の割合が約60%と大きく依存していることが要因として挙げられる。その自己水源である5本の井戸のうち3本は代替水源が確保されるまでの暫定井戸であるため,代替水源が確保された場合は更なる給水原価の上昇が見込まれる。以上のことから,現状は黒字経営を維持しているものの,健全経営を続けていくための主な課題として,人口減少傾向のなかの収益の確保,施設管路の更新需要の増大,浄水受水への依存の3点が挙げられる。
老朽化の状況について
昭和48年に水道事業を創設して以来40年を経過しており,創設当初に布設した管路が多く占めるため,経年化率は平均値と比べ高い数値を示すとともに,有形固定資産減価償却率も平均値より高い数値を示している。今後も経年化率の更なる上昇が懸念されるが,管路更新率が平均値と比べて低い数値を示している。その主な要因として,管路の更新には多額な費用を要することの他に浄水場施設の更新を同時期に実施していることがあげられる。
全体総括
人口減少及び大口需要者の地下水への転換に伴う有収水量の減少傾向に伴い,将来の給水収益の減少が予測される。同時に,暫定井戸から受水へ転換した場合には,受水に係る支出が大幅に増加し,収支がさらに悪化することが見込まれる。また,経年化が進んでいる施設・管路の更新も急務であり,その財源の確保も喫緊の課題である。そこで,施設の更新費用を確保しつつ健全経営を維持するためには,各種補助金の積極活用による財源確保,受水量の節減及び受水単価の軽減の働きかけによるコストの節減を検討する必要がある。