経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は100%が確保され年々微増しているが、これは給水人口の増加により給水収益も増加しているためである。一方で料金回収率は6割程度で市よりの繰入金で経営が補われているが、今後は有収水量の伸びが推定され、料金回収率も徐々に改善が見込まれる。⑧有収率を見てみると管路整備後間もないため、類似団体よりも良い値を示しており、配水においては効率的な水の供給運営をしていると言える。しかし、⑦施設利用率が、類似団体に比べて低くなっている点が際立っている。これは施設規模に対して配水量が少ないことを示しており、配水量が増加する余地はあるものの人口減少も想定されるので、注視する点である。また、④企業債残高対給水収益比率については、類似団体の3倍近い値を示している。これは、有収水量が少なく給水収益が類似団体に比べて小さいことのみならず、水道を整備して間もないため、企業債残額が事業体規模に比して大きいことによる。この企業債支払利子や少ない有収水量及び整備後間もない施設の減価償却費等により、⑥給水原価が平均よりも高く、近隣団体と比較しても2倍近い値となっている。経営の課題は、配水量を増加させることであるが、当市においては普及率という潜在的な消費力が未だあると類推されるため、利用促進に努めたい。
老朽化の状況について
当事業体は昭和63年より簡易水道として事業を開始した比較的新しい事業体であり、施設の老朽化を迎えるまでに比較的猶予がある。しかし、他事業体よりも短期間で整備を進めてきた背景があり、耐用年数を迎える施設および管路の更新が集中的に訪れることとなる。そのため、調査表に現れない部分で当事業体は老朽化に対して施設更新のため事業費の平準化を検討する必要がある。また、規定の耐用年数以外に、使用状況、天災等の外的要因により、緊急的に施設にかける事態が近年多発していることをふまえ、今後の設備更新は、調査表から想定される負担以上のものとなる可能性があることを考慮しなければならない。
全体総括
施設の規模に対する配水量の少なさや低い水道普及率が、経営の課題となっている。未だ水道を利用していない方々に安心安全で、安定供給可能な水道への理解を深め、水道への認識を改善させることによって、水道普及率を向上させ、配水量の増加を促すことで市からの繰入金に頼らず独立採算を基本として経営をしていかなければならない。さらに、高い水道普及率を得られた後に求められる配水量から、最適な施設の数、規模、稼働率を再定義することによって経営の効率化を図る必要がある。また、有形固定資産減価償却率のグラフからも分かるように資産老朽化は年々進むので、単年度にかかる負担を分散するように施設の更新計画を作成し、より安定した事業の運営を図っていく。