経営の健全性・効率性について
①震災のあったH23年度を除き、継続的に100%を上回る黒字経営が続いている。制度改正の影響で前年度比率を下回ったH26年度に比べ、H27年度は平年ベースに戻り、住宅等新築に伴い給水収益が伸びたことで比率がアップした。同規模類似団体(以下、類団)平均をさらに上回った。②累積欠損金は現時点で発生していない。③毎年度100%を超え、支払能力は十分備えている。④全国及び類団平均値より企業債残高割合が少なく減少傾向にある。他団体と比べて債務は軽いと言える。⑤給水収益増収とH27年1月に再開した給水停止措置などが要因で前年度比34ポイントと大幅に上昇した。全国及び類団平均値もさらに上回った。給水に係る費用は給水収益で賄っているが、口座振替の推進や滞納対策を一層強化し回収率アップを目指す。⑥類団平均水準に近づいたが、全国平均では8.7ポイント上回っている。維持管理費の縮減や経常費用の見直し、投資の効率化を進める必要がある。⑦全国及び類団平均値を下回っている要因は、原発事故で避難指示区域に設定された小高水道事業が要因である。H28年7月に給水区域の大部分が避難指示区域解除となり、利用率は上昇すると予測される。しかし、給水人口の減少に伴う収益低下の長期化を踏まえ、水需要予測を反映した適正な施設規模を検討しなければならない。⑧前年度を0.4ポイント上昇した。特に、避難指示区域が解除された小高水道事業は、28年度以後は有収率は上昇すると予測される。無収水量の主たる要因が漏水であるので、老朽管の更新や適正な維持管理に努め、漏水防止対策も継続的に取り組む。
老朽化の状況について
①全国及び類団平均値を上回り、比率が上昇傾向にあるため、配水管路について布設後20年を経過した管路のうち、漏水等が多く耐久性が低下している区間を選定し、更新事業を実施する必要がある。②全国及び類団平均値を下回っている。近年は0%が続いていたが、H27年度は2.32%となり、今後更新時期を迎える管路の増加が考えられるため、計画的かつ効率的な更新に取り組む。③類団平均値を上回っている。年度により差があり、特にH26年度は復旧・復興事業を優先したため更新率が著しく低下した。H27年度には事業を再開したため大きく上昇した。またH29年度に策定予定の施設全体の更新計画に基づきながら、今後計画的に実施していく予定である。※管路の耐久性が低下している区間の選定と、限られた財源の中で管路の優先度を評価した計画的な方策が課題となる。
全体総括
当市水道事業全体の経営は、収益性については概ね良好と捉えている。しかし、指標に表れていないが、小高水道事業は震災と原発事故以降給水収益が激減し、営業損失の長期化を余儀なくされた。H28年度に避難指示区域の大部分が解除されたものの、帰還者数の伸びは依然不透明であり、将来の水需要の動向も予測が難しい。全体的な給水収益の増収は復興需要と捉えられ、一時的なものとみている。そのため、人口減少の加速化に伴う収益の減少傾向と老朽施設等の更新需要を賄えるだけの莫大な財源確保が喫緊の課題である。今後は経営戦略やアセットマネジメント計画を策定し、中長期財政収支を見通した中で計画的に施設等を更新し、維持管理の効率化を一段と進めるとともに、災害に強いまちづくりを推進するための施設等の長寿命化・耐震化に取り組みながら、安全安心な水道水の供給に努めていく。