経営の健全性・効率性について
経常収支比率は100%を上回って推移しており、収支は比較的良好といえる。しかし、水需要が大きく減少していることに伴い、収益の大部分を占める給水収益の減少が顕著となっている状況でもある。そのため、費用の抑制に取り組み、適正な経営管理に努めていく必要がある。流動比率についても100%を上回って推移し、加えて、流動資産の大半を現金預金が占めており、支払能力は十分確保できている。しかし、給水収益の減少や、将来の施設更新投資増による現金不足も考えられるため、実施事業を精査しながら、適正管理に努めていく。企業債残高対給水収益比率は、平成20年度以降の企業債借入の抑制により年々減少しており、類似団体と比較しても低く推移している。今後、大規模事業による企業債借入を予定していることもあり、適正な給水収益を確保するためにも、料金水準の見直しについて検討する必要がある。料金回収率については100%を越えて推移しており、経営状況は比較的良好といえる。給水原価については、類似団体や全国平均と比べて同規模で推移している。適正価格を維持していくためにも、企業努力による費用削減および有収水量の確保に取り組んでいく。施設利用率は、類似団体と比較しても概ね高い水準で推移している。施設を有効に活用し、適切な施設規模を維持できているといえる。有収率は、類似団体に比べ高い比率で推移している。この要因として、毎年実施している漏水調査業務委託によって、漏水箇所等の早期発見が可能となっていることが挙げられる。今後も、老朽管更新等の漏水防止対策により、有収率の安定性の向上に努めていく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却比率は、類似団体と同様に上昇傾向にある。これは、減価償却の進み具合が顕著で、施設の老朽化が進んでいることが要因となっている。管路経年化率は、類似団体の平均値よりも低い水準となっている。この要因は、上水道拡張事業により、昭和50年代にかけて布設された管路が多いためであり、今後、約90㎞の管路が次々と耐用年数を迎えることにより、比率は一気に上昇していく予定である。現在の管路更新率を維持するためには、更新延長を大幅に増やす必要がある。ただ、少子高齢化による給水人口の減少や家族構成の変化、省エネ意識の浸透、節水機器の普及等により水需要は大きく減少しており、管路更新にかかる事業費の確保が困難になることが予想されている。そのため、耐用年数を超えた全ての管路を一斉に更新することは難しい状況となっている。今後は、濁り水や漏水事故が多発している管路を優先的に更新することで、施設の維持管理に努め、水道水の安定供給に取り組んでいく。
全体総括
経営の健全性および効率性の指標から見る限りでは、現在の経営は安定かつ適正に事業運営されていると思われる。しかしながら、老朽化の状況指標から推測されるように、減価償却の進み具合が顕著なことや、管路更新率の低さなどにより、施設更新投資が大幅増となることが予測される。今後の事業運営の中で、老朽施設の更新や災害に強い水道など、ハード面の再構築が必要となってくるとともに、少子高齢化や人口減社会による水需要の減少への対処が重要な課題として挙げられている。こうした中で、長期に渡り、安全で安心な水の安定供給と持続を実現するために、料金水準の見直しを含めた給水収益の確保と、水需要に見合った施設更新投資により、適切な事業運営に取り組んでいく。