経営の健全性・効率性について
経常収支比率については過去5年間で平均110%を超えており、累積欠損も発生していない。流動比率に関しては、H26年度急激に指標が悪化しているが、会計制度の改正により、H25年度まで資本金計上することとなっていた借入金が、負債計上されることとなった影響によるものである。借入金のうち、向こう1年間の企業債返済額について、流動負債に計上するよう義務づけられたためであり、経営自体が悪化したものではない。しかし、改正により向こう1年間の返済にかかる資金が可視化されたことにより、流動負債よりも流動資産が少ないことが判明しリスクとして認識することとなった。流動負債の借入金は全て建設改良に充てられた企業債であり、返済の原資は給水収益によって賄われおり、今後10年間の中期財政推計においては、微減はするものの毎年度約7億円の収益は確保できるものと判断している。これにより経常収支は約1億円で推移を見込み、非現金費用である減価償却費等は約3.5億円程度で推移するので約4.5億円のキャッシュインを見込む。流動負債は約4億円で、8割を占める企業債償還金は、H28年度の3.5億円をピークに減少へ転じる。これにより今後10年間において資金ショートは想定しないが、資産投資額への注視と想定外の事故などに備えた改善が必要である。H27年度は前年比で7ポイント改善した。企業債残高対給水収益比率について、類似団体と比較すると企業債の規模は大きい。これは、全国的に高度成長期の設備投資が一段落して企業債の返済が進んでいる事業体が多いのに対して、北斗市は平成以降も人口流入が続き、水道施設拡張に追われたことから、企業債の返済途上にあることが影響しているものと判断できる。料金回収率はH26年度と比較し7ポイント増の120%となっており、料金収入のみで独立採算を保っているのが読み取れる。これにより、後年時へ負担を先送りすることなく、料金により施設の更新財源を回収しているものと分析されるが、人口減少に伴う給水収益の減少や、修繕費用などの増加により、指標は低下するので注視する必要がある。給水原価は、減少傾向にあり、H27年度は123円/㎥となった。類似他団体と比較すると約50円/㎥程度安価である。超過1㎥あたりの料金設定が130円(税抜)であるため、原価は概ね料金へ転嫁し、将来投資分へ資金を確保出来ている状況と判断できる。原価の低減は、低廉な給水の提供に繋がるため、なおも維持管理費のスリム化を検討する必要がある。だが、視点を変えると、平成以降に投資された比較的新しい資産により、維持管理費用が抑制されているものであると考察でき、経年による維持管理費用の増加を注視しなければならない。施設利用率は約75%で推移しており、類似団体と比較すると効率的な配水が提供されている。近年まで拡張事業が行われていたため、需要に比例した結果の指標であると考えられる。しかし、給水人口が減少傾向にあるため、今後指標の低下が危惧される。逆に、新幹線開業に伴い、大口需要の発生、繁忙期の安定供給など、施設にかかる負荷を注視し、適切な投資の判断を迫られる。有収率については、類似団体と比較すると指標は高い。数年低下傾向にあったが、H27年度は若干改善された。ただし、依然として老朽化による漏水修繕は頻発しており、指標の低下に予断は許さない状況である。有収率の悪化は、老朽資産の顕在化として捉えられ、維持管理費の増加が危惧される。流動比率の指標の低さや企業債残高が高水準であることから、維持管理費増加のリスクは重く、今後も更なる改善が課題である。各指標を整理すると、収益は黒字で独立採算を保ち、比較的安価に効率よく水の供給ができているため、健全に経営されているものと分析できる。しかしながら、流動比率の悪さ故、更新費用の財源が構築されているとは言い難く、建設改良が企業債に依存されている側面もある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率について、H25年度から26年度にかけて償却率がアップしたのは会計制度改正の影響によるもので、減価償却から除外されていた資産を計上したためである。指標は類似団体、全国平均からみても軒並み同様の数値を示している。全国的に同様の数値を示しており、北斗市においても施設の老朽化が進行しているのが読み取れる。老朽化の指標が全国平均と同様の指標を示しているにも関わらず、企業債残高対給水収益比率の指標が高いこと考察すると、起債依存度が高いことが読み取れ、流動比率の指標が低いことにも影響している。管路経年化率は、全国的にみて北斗市の指標が高いく経年化率が進行しているのが読み取れる。実に管路の4分の1が法定耐用年数を超えていることを示しているため、埋設地の土壌や管の養生により、長寿命化を図ることが喫緊の課題であり、取組みを始めている。次いで、管路更新率は前年よりも指標は低下したが、類似団体と比較すると高水準である。しかしながら指標上は優良に見えるが、管路更新を終えるには100年程度かかる計算である。配水管の法定耐用年数は40年であるため、机上の更新率は2.5%が望ましい。長寿命化に取り組んではいるものの不安要素が多い。また、更新年数を延長するほど、近年の拡張事業により投資された管も耐用年数を超えてくるため、計画的な更新が必要とされる。
全体総括
短期的に分析すると、北斗市の水道事業は健全に経営されており、効率的且つ低廉に供給できている。一方で、起債依存度が高く、流動比率が低水準であるため、資金繰りに脆弱な一面がみられる。中長期的には、全国平均よりも高い管路経年化率の影響か有収率の減少が顕在化してきており、更新費用の増加が懸念される。前述のとおり、流動比率が低く、起債依存度が高いため、更新費用の増加は、更なる流動比率の悪化、必要な更新投資の先送り、それに伴う維持管理費の増加、キャッシュの減少といった悪循環に陥ることも十分に想定できる。加えて給水人口が減少傾向であるため、黒字経営は短期的なものと認識し、経営改善や適切な投資計画を再検討する必要がある。