経営の健全性・効率性について
「収益的収支比率」は、100%を大幅に割り込んでおり、総収益で総費用及び地方債償還金を賄えていない状況である。これは、下水道整備が途上にあり、地方債償還額の増加及び水洗化率の低迷などが大きな要因であると考える。また、各指標についても、類似団体平均より悪い数値となっているが、下水道整備の進捗により、水洗便所設置済人口及び有収水量が増加したことで、「経費回収率」及び「汚水処理原価」の改善につながっている。「企業債残高対事業規模比率」は、類似団体平均を上回る高い比率となっているが、本市の下水道普及率は15.3%と低く、今後も続く管渠等の整備には地方債の活用が必要不可欠であることから、当面は高い比率で推移することが予想される。なお、施設の効率性を示す「水洗化率」や「施設利用率」は、相対的に低い水準である。「水洗化率」については、汚水管渠の整備による処理区域の拡大により、処理区域内人口増加率が水洗便所設置済人口増加率を上回る状況となっている。「施設利用率」については、徐々に下水道への接続が増えており、僅かずつではあるものの利用率の向上が見られる。
老朽化の状況について
当該事業の供用開始は、肱南処理区が平成7年度、肱北処理区が平成20年度である。汚水管渠については、耐用年数が50年とされていることから、施設の老朽化は進行しているものの現在のところ改築工事等の必要はない状況である。処理場については、肱南浄化センターが建築後20年以上が経過し、施設の経年劣化や設備の機能低下が生じていることから、平成23年度より長寿命化事業を実施しているところである。また、雨水ポンプ場及び肱北浄化センター等の施設の老朽化等に対応するため、ストックマネジメント実施計画の策定作業を進めており、今後も計画的な改築更新を行うこととしている。
全体総括
当該事業の経営状況は、健全性・効率性ともに類似団体の平均を下回る状況となっている。また、事業開始から、27年が経過し、施設の老朽化等も進んでおり、長寿命化対策等を計画的に実施して、将来負担の軽減を図る必要がある。これらの状況を改善し、健全で安定した下水道経営とするには、適正な事業規模、使用料単価の見直し、維持管理費の削減など全体的に見直しを行うとともに、戸別訪問や広報誌等による接続促進、水洗化費用の融資あっせんや利子補給等を行い、接続率の向上を図り、使用料収入の増加に努めるとともに、国に協力を求めながら計画的に事業を推進し、早期概成を図る必要がある。今後においても、これらの対策と合わせ、増大する維持管理費の抑制と建設事業への適正な投資により、経営の改善を目指すとともに、財政負担の軽減を図るものである。