経営の健全性・効率性について
公共下水道事業は,経常収支比率が100%を上回っているため,収益性に問題はありませんが,独立採算を原則とする公営企業でありながら,収益の大部分を一般会計からの補助金に依存しているため,健全な経営状況であるとはいえません(使用料収入:266百万円,一般会計補助金:409百万円(基準内:322百万,基準外:87百万))。使用料の改定や普及促進活動による接続率の向上,経費の見直し等の取り組みより,経営の健全化を図るとともに,基準外繰入の削減を早急に行わなければなりません。流動比率は,全国平均と比べ低い水準にありますが,これは保有する現金預金等の流動資産に比べ,単年度の企業債償還額が大幅に上回ることによるものです。しかしながら,現行の財政制度においては,資本費平準化債を活用することが出来るため,単年度の支払に不足が生じることはありません。企業債残高対事業規模比率は,全国平均のみならず類似団体平均とも大きくかけ離れた状況です。直ちに解消できるものではありませんが,前述した使用料の改定等の経営の健全化を図るなかで,資本費平準化債の発行を抑制するなどし,改善を図らなければなりません。経費回収率や汚水処理原価は,経営の健全化の過程において,改善されていく見通しですし,施設利用率は,令和17年度まで管渠・管路布設工事を予定しているため,上昇する見通しです。水洗化率は,面整備の途上であるため直ちに改善するものではありませんが,普及促進活動を積極的に行うことにより,供用開始後の早期接続を図り,全国平均値に近づけなければなりません。
老朽化の状況について
公共下水道事業は,平成3年に工事着手し,平成12年に供用を開始しているため,管渠・管路はさほど老朽化が進んでいません。しかしながら,受贈により取得した管路については,老朽化が進んだものがあるため,管更生の実施等で対応を行っていきます。施設については,ストックマネジメント計画に基づき,効率的に老朽化した施設の更新に努めています。
全体総括
公共下水道事業は,令和17年度まで面整備をすすめていくため,一時的に使用料収入の増加が見込まれます。しかしながら,その後は人口減少に伴う使用料収入の減少や,老朽化した管路・施設の維持管理費の増大が見込まれます。以上のことから,経営の健全化は喫緊の課題であると認識し,令和2年度は次の二つの取り組みを行いました。一つは,『三次市下水道使用料等検討委員会』を設置し,適正な使用料のあり方についての検討を始めたことです。これは,令和3年度中に意見の取りまとめが行われる予定です。もう一つは,企業会計の導入により,長期的な財政指標の算出が容易となったため,それを活用し『三次市下水道事業経営戦略』を改定したことです。これらに基づき,経営指標を改善するとともに,持続可能な事業の確立をめざしていきます。