経営の健全性・効率性について
経常収支比率については過去5年間で平均110%となっており、累積欠損も発生していない。流動比率に関しては、H26年度急激に指標が悪化しているが、会計制度の改正により、H25年度まで資本金計上することとなっていた借入金が、負債計上されることとなった影響によるもの。借入金のうち、向こう1年間の企業債返済額について、流動負債に計上するよう義務づけられたためであり、経営自体が悪化したものではない。しかし、改正により向こう1年間の返済にかかる資金が可視化されたことにより、流動負債よりも流動資産が少ないことが判明し、リスクとして認識することとなった。指標は約65%となっているが、流動負債の借入金は全て建設改良に充てられた企業債であり、返済の原資は給水収益によって賄われるものである。経常利益は約1億円で推移を見込んでおり、毎年度償還額は減少しているため、喫緊の資金ショートは見込まれないが、改善が必要である。企業債残高対給水収益比率について、類似団体と比較すると企業債の規模は大きい。これは、全国的に高度成長期の設備投資が一段落して企業債の返済が進んでいる事業体が多いのに対して、北斗市は平成以降も人口流入が続き、水道施設拡張に追われたことから、企業債の返済途上にあることが影響しているものと判断できる。料金回収率は類似団体が100%に満たないなか、軒並み回収率110%程度を維持しており、料金収入のみで独立採算を保っているのが読み取れる。これは、後年時へ負担を先送りすることなく、料金により施設の更新財源を回収しているものと分析されるが、修繕費用などの増加に注視する必要がある。給水原価は、平均約130円/㎥となっており、類似他団体と比較すると約40円/㎥程度安価である。超過1㎥あたりの料金設定が130円(税抜)であるため、原価は概ね料金へ転嫁されている。原価の低減は、低廉な給水の提供に繋がるため、なおも維持管理費のスリム化を検討する必要がある。だが、視点を変えると、平成以降に投資された比較的新しい資産により、維持管理費用が抑制されているものであると考察でき、経年による維持管理費用の増加を注視しなければならない。施設利用率は約75%で推移しており、類似団体と比較すると効率的な配水が提供されている。近年まで拡張事業が行われていたため、需要に比例した結果の指標であると考えられる。しかし、給水人口が減少傾向にあるため、今後指標の低下が危惧される。逆に、新幹線開業に伴い、大口需要の発生、繁忙期の安定供給など、施設にかかる負荷を注視し、適切な投資の判断を迫られる。有収率については、類似団体と比較すると指標は高いが、ここ3年間において指標は悪化している。有収率の悪化は、老朽資産の顕在化として捉えられ、維持管理費の増加が危惧される。流動比率の指標の低さや企業債残高が高水準であることから、維持管理費増加のリスクは重く、喫緊の改善が必要である。各指標を整理すると、収益は黒字で独立採算を保ち、比較的安価に効率よく水の供給ができているため、健全に経営されているものと分析できる。しかしながら、流動比率の悪さ故、更新費用の財源が構築されているとは言い難く、建設改良が企業債に依存されている側面もある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率について、H25年度から26年度にかけて償却率がアップしたのは会計制度改正の影響によるもので、減価償却から除外されていた資産を計上したためである。指標は類似団体、全国平均からみても軒並み同様の数値を示している。全国的に同様の数値を示しており、北斗市も同様に施設の老朽化が進行しているのが読み取れる。老朽化の指標が全国平均と同様の指標を示しているにも関わらず、企業債残高対給水収益比率の指標が高いこと考察すると、起債依存度が高いことが読み取れ、流動比率の指標が低いことにも影響している。管路経年化率は、全国的にみて北斗市の指標が高く経年化率が進行しているのが読み取れる。実に管路の4分の1が法定耐用年数を超えていることを示しているため、埋設地の土壌や管の養生により、長寿命化を図ることが喫緊の課題であり、取組みを始めている。次いで、管路更新率をみると全国平均、類似団体ともに1%を切っているが、北斗市は1.2%である。指標上は優良に見えるが、管路更新を終えるには80年程度かかる計算である。配水管の法定耐用年数は40年であり、長寿命化に取り組んではいるもののは不安要素が多い。更新年数を延長するほど、近年の拡張事業により投資された管も耐用年数を超えてくるため、計画的な更新が必要とされる。
全体総括
短期的に分析すると、北斗市の水道事業は健全に経営されており、効率的且つ低廉に供給できている。一方で、起債依存度が高く、流動比率が低水準であるため、資金繰りに脆弱な一面がみられる。中長期的には、全国平均よりも高い管路経年化率の影響か有収率の減少が顕在化してきており、更新費用の増加が懸念される。前述のとおり、流動比率が低く、起債依存度が高いため、更新費用の増加は、更なる流動比率の悪化、必要な更新投資の先送り、それに伴う維持管理費の増加、キャッシュの減少といった悪循環に陥ることも十分に想定できる。加えて給水人口が減少傾向であるため、黒字経営は短期的なものと認識し、経営改善や適切な投資計画を再検討する必要がある。