経営の健全性・効率性について
本市の公共下水道事業においては、地方債残高が昨年に比べ減少しているものの、依然として高い水準にあり、この償還に要する費用が大きな負担となっている状況である(④企業債残高対事業規模比率)。地方債償還金が汚水処理費を押し上げているため、経費回収率が低くなり、経営の効率化を低下させているといえる。①収益的収支比率は、昨年に比べ微増したが、100%には遠く及ばない状況である。総経費を使用料収入で賄うことができず、総収益の約半数を一般会計繰入金に依存し、地方債償還には資本費平準化債の発行が不可欠となっている。⑥汚水処理原価は、昨年度より増加している。これは、有収水量は微増しているものの、汚水処理費の維持管理費が昨年度より大きく増加しているからである。処理場の機械や電気設備などの更新時期到来に伴う維持管理費の増加や消費税の増税に伴う支払額の増加が原因と考えられる。⑦施設利用率は、約60%で推移しているが、将来の集落排水区域からの一部統合を前提としていることから、施設の規模は適当と見ている。⑧水洗化率は、汚水管の面整備が概ね完了した中、接続が順調になされ昨年度よりさらに向上している。また、平成24年度以降団体平均を上回っている。
老朽化の状況について
本市では、昭和58年度に公共下水道事業に着手したのち、平成2年度から順次供用を開始し、汚水管の面整備は概ね完了した。管渠の耐用年数は約50年で、更新時期はまだ到来していないため、③管渠改善率は0%となっている。一方で、処理場の機械や電気設備については、更新時期を迎えたことから、平成27年度から長寿命化計画の策定の取り組みを始めた。平成28年度には、ストックマネジメント計画(旧長寿命化計画)の策定として、機械・電気設備の長寿命化対策の調査や処理場の管理棟などの耐震診断調査に取り組んでいる。平成29年度には、平成27、28年度に行った調査をもとに、処理場の更新計画の策定を行う予定である。今後は、更新時期を見据えながら、予防保全型の計画的な維持管理を実施するとともに、長寿命化対策を含めた効率的な維持管理に努める。
全体総括
経営の健全化のためには、地方債償還金の負担が最大の課題であるが、固定的に必要とされる費用であり、短期間での削減は厳しいことから、維持管理費の削減と使用料収入の増加を図る必要がある。維持管理費については、処理場の運転管理業務に包括的民間委託の導入を検討するなど、徹底的な抑制に努める。使用料は、今後、人口減少等による使用料収入の減少が見込まれているため、下水道への接続を促す啓発や不明水調査を実施するなど有収水量を増加させる取り組みを継続していく。また、平成28年度11月分(10月使用分)から使用料を改正することにあわせ、収納等業務の民間委託により徴収率を向上させ、使用料収入の増加を図る。平成32年度に地方公営企業法を適用し、公営企業会計を導入することで、経営健全化・効率化を推進し、より一層の経営基盤の強化を図っていく。