経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は100%が望ましいが、現状としては70%台前半で推移している。平成28年度においては、料金収入は微増、費用は微減したが、一般会計基準内繰入金が減少したことで、前年度からほぼ横ばいとなっている。収益的収支比率が70%台に留まっている大きな要因は地方債償還金であるが、償還額、利息額は28年度まで年々減少している。企業債残高対事業規模比率についても毎年減少しており、平成28年度は一般会計負担分を除く地方債残高が償還により前年度から約4億円減少したことで、135.75ポイントの減少となっている。但し、今後は平成32年までの長寿命化及びそれ以降のストックマネジメント事業に伴う新規起債が予定されており、その償還により、これまで同様の減少は見込めない。経費回収率は年々微増しているが未だ60%未満という低い値で推移しており、汚水処理原価は類似団体の平均値と比較して高額である。主な原因として、収入の面では使用料の設定が平成19年度の改定以降据え置きであること、また費用の面では、汚水処理費のうち資本費は地方債償還により減少しているものの、維持管理費が横ばい状態であることが挙げられる。施設利用率については、類似団体平均は超えているものの、30%程の余力がある状態である。また水洗化率は類似団体の平均値を上回るが、全国平均に及ばない。人口密度の高い市街地の整備が概ね終わり、今後大幅な供用開始区域の拡大が見込まれない中、これらの経営指標の数値改善のためには、今後、水洗化率の向上、効率的な経営による費用の抑制と同時に、適切な使用料の設定も必要と思われる。
老朽化の状況について
本市の公共下水道事業は平成10年の事業開始からの経過年数が19年であり、耐用年数が50年の管渠については、老朽化対策が必要な段階には至っていないため、管渠改善率は0%である。一方、処理場の施設・設備については耐用年数が概ね20年であり、実際に浄化センターの主要部分について経年的劣化、それによる処理機能の低下が認められる。このため、事故の未然防止及びライフサイクルコストの最小限化を図り、平成27年度から32年度まで長寿命化事業を実施し、その後はストックマネジメント事業を実施することで、施設の更新等を随時行っている。
全体総括
供用開始からの年数としては長い方ではないが、処理場施設設備については既に長寿命化、更新等が必要な段階に入っており、それらの対策を進めながら、将来的な管渠の老朽化も見据えて、事業を進めていかなければならない。具体的には以下のような方策により、経費回収率、ひいては収益的収支比率の増加を図る。①長寿命化のための設備更新等における高効率機器の導入を初めとする,経費の削減による汚水処理原価の抑制②接続意識の高い地域を優先した効率的な整備と、未接続世帯への下水道普及促進による水洗化率の向上③平成32年度からの地方公営企業法の適用により財政状況を明確にした上での、適正な使用料の検討