経営の健全性・効率性について
本市では、近年地方債残高は減少傾向にあり、それに伴い償還金額も減少傾向にある。総費用もほぼ横ばいか僅かながら減少傾向にある。しかしながら企業債残高対事業規模比率が近年に比べ増加している。これは使用料収益が減少したことにより、指標の分母である事業規模が減少したためである。また、収益的収支比率も減少しているが、これは料金収入の減少とともに、一般会計からの繰入金が減額されていることも原因となっている。経費回収率の数値より、使用料で回収すべき経費を使用料以外の収入で賄っていることがわかるが、これは主に地方債の償還金への繰入である。ただし、償還金額は減少傾向になっており、これに伴い、今後繰入金も減額されていくものと見込まれる。施設利用率は類似団体平均値を下回っており、50%に届いていない。これは現時点においても事業計画区域に含まれていない全体計画区域面積が、全体計画面積の30%近くあることや、当初の計画段階において人口が増加するものとして設計がされていたことなどから、施設規模が過大となっているため、このような施設利用率に留まっている。今後現状に見合った計画を策定していく必要がある。水洗化率も類似団体平均値と比較すると14ポイント程度下回っており、使用料収益が伸び悩んでいる一因であるとともに、管渠整備等に投じた費用の回収ができておらず、非効率的な経営となっている。
老朽化の状況について
管渠老朽化率等は数値化されていないが、本市下水道事業は昭和49年より事業が開始されたため、初期に布設された管渠は布設後40年以上を経過しており、間もなく耐用年数を経過する。管渠更新及び老朽化対策については、類似団体平均値も低い水準であるが、本市では更新実績はなく施設及び設備の老朽化対策の実施に留まっている。今後は管渠の耐用年数経過に備え、ストックマネジメント実施のため点検・調査及び修繕・改築の計画を策定、それに基づいた更新、老朽化対策を実施する。主要な管渠において腐食する恐れの大きい箇所については、改正下水道法に基づき、新たな事業計画を策定し、点検方法や頻度を定める。
全体総括
今後の課題として管渠の老朽化への対応が挙げられるが、まずは一般会計からの繰入金への過度な依存を解消することが重要と考える。そのためには、使用料の増収が必要不可欠であることから、類似団体平均値を下回っている水洗化率の向上による有収水量及び使用料使用料収益の増大が求められる。水洗化率を向上させるには長期間未接続である世帯の接続が重要であるため、そのような世帯への接続推進活動をより強めることや誘因となりうる施策を講じる必要があると思われる。また、適正な使用料収入の確保のため使用料の改定を経営戦略等の策定を行い検討していくことが必要であると考える。費用の面としては、施設が過大となっていることによる維持管理費の無駄もあると考えられるため、施設規模の縮減等による維持管理費の削減も検討していく必要がある。