経営の健全性・効率性について
当市の公共下水道の整備率は、平成29年度末現在で61.8%と低く、現在も面整備を進めているところである。収益的収支比率は、ストックマネジメント計画策定に係る費用が発生したことで前年度に比べ総費用額が増加し大幅に比率が低下したものであり、その費用を除けば同水準での推移となる。しかし、依然として50%を割り込んでおり、総収益で総費用及び地方債償還金を賄えていない状況である。今後も面整備に伴う地方債償還金が増加していくことから、当面、大きく改善する見込みは少ないものの、引き続き経費削減や接続率向上を図っていく。また、経費回収率と汚水処理原価についても、同じ理由から一時的に汚水処理に係る経費が高くなったものであり、その費用を除けば改善傾向にある。企業債残高対事業規模比率は、平成28年度から大幅に低下しているが、これは分流式下水道経費算定方法の変更等により一般会計負担額が増加したことによるものであり、大幅な企業債残高の減少や使用料収入の増加があったものではない。今後も面整備や施設の改築更新に伴う企業債の借入が続くことから同水準での推移が見込まれる。なお、施設利用率を始めとする他の比率については、類似団体平均より低水準となっているものの改善傾向にある。今後も面整備の進捗に伴って接続率が向上することで、さらに改善が図られるものと期待している。
老朽化の状況について
当該事業の供用開始は、肱南処理区が平成7年度、肱北処理区が平成20年度である。汚水管渠については、耐用年数が50年とされていることから、現時点での更新工事の必要性は低い。処理場については、肱南浄化センターにおいて建築後20年以上が経過し、施設の経年劣化や設備の機能低下が生じていることから、平成23年度より長寿命化事業を実施しているところである。また、雨水ポンプ場及び肱北浄化センター等の施設についても、老朽化等に対応するため、ストックマネジメント実施計画を策定し、今後も計画的な改築更新を行うこととしている。
全体総括
当該事業の経営状況は、健全性・効率性ともに類似団体の平均値を下回る状況となっている。これを改善し、健全で安定した下水道経営を目指すため、全体計画区域の縮小や事業計画区域の拡大による事業規模の適正化を図っている。また、維持管理費の削減に努めるとともに、戸別訪問等による接続促進や水洗化費用の融資あっせん等を行うことで接続率向上を図り、使用料収入の増加を目指している。今後においても、国庫補助事業を活用して、計画的な面整備や改築更新事業を推進し、将来における財政負担の軽減を図る必要がある。