経営の健全性・効率性について
汚水処理原価は類似団体の平均値を大きく上回っている。これは、水洗化率が低いことにより計画処理水量に達していないこと、汚水資本費の算定方法を改め、より正確な資本費が算出され、例年330円前後であった汚水処理原価が480円を越える金額となったことによるものと考える。この汚水処理原価が高額なことにより、使用料で回収すべき経費が回収できていないため経費回収率が低い水準となっている。また、経費回収率から使用料で賄うべき経費を使用料収入以外で賄っていることもわかる。地方債残高は減少傾向にあり、それに伴い地方債償還金も減少傾向にある。前年度より企業債残高対事業規模比率が減少しているが、これは前年度に比べ使用料収入がわずかに増加したこと、地方債残高が減少し料金収入に対する起債残高の割合が減少したことが要因と考える。しかし、企業債残高や償還金が減少しているにも関わらず収益的収支比率は減少している。その要因としてあげられるのが、使用料収入の伸び悩みと一般会計からの繰入金の減額であり、これは下水道事業が一般会計からの繰入金に依存していることを示している。施設利用率は類似団体平均値を下回っており、50%にも届いておらず、水洗化率についても類似団体平均を下回っている。水洗化の伸び悩みにより流入水量が少なくなり、処理場の処理能力に対する流入水量が少なくなっているため運転が非効率な状況となっているといえる。
老朽化の状況について
管渠老朽化率等は数値化されていないが、本市下水道事業は昭和49年より事業が開始されたため、初期に布設された管渠は布設後40年以上を経過しており、まもなく耐用年数を経過する。管渠更新及び老朽化対策については、類似団体平均値も低い水準に留まっているものの、本市では更新実績はなく、施設及び設備の老朽化対策の実施に留まっている。今後は管渠の耐用年数経過に備え、ストックマネジメント実施のため策定した計画や耐震対策の計画に基づき、更新、老朽化対策を実施していく。主要な管渠において、腐食する恐れの大きい箇所については、改正下水道法に基づき新たな事業計画を策定し点検方法及び頻度を定める。
全体総括
今後の課題として使用料の増収があげられる。類似団体平均値を下回っている水洗化率の向上による有収水量及び使用料収益の増大が必要不可欠である。水洗化率を向上させるには長期間未接続である世帯の接続が重要であるため接続促進活動をより一層強めることや接続の誘因となりうる施策を講じる必要がある。水洗化促進の取組みを重点的に実施し、使用料回収に努めることが重要である。有収水量増大のためには不明水量を減らすことも重要となる。これは処理費及び処理原価の減額にも繋がると考えられる。初期に布設された管渠は布設40年以上経過しており不明水が多く有収率が低い状況であるため今後は策定した計画に基づき管渠の改築更新を進め、不明水量対策を実施する必要がある。更に、適正な使用料収入の確保のため経営戦略等の策定を行い料金改定について検討していくことが必要であると考える。この使用料収益が増大は、一般会計からの繰入金への過度な依存の解消繋がると思われる。また、施設が過大となっていることによる維持管理費の無駄も考えられるため、規模削減等による維持管理費の削減も検討していく必要がある。