経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は、流域下水道維持管理負担金や委託料などの増加により総費用が増加したため、昨年度に比べ低下した。今年度も100%を超えており黒字経営だが、一般会計からの繰入金が総収益の約7割を占めており繰入金に依存している状態であるため、経営改善が必要である。収益性を考えた効率的な整備と接続促進活動により接続率を向上させ、使用料の増収を目指していく。⑤経費回収率は、汚水処理施設廃止補助金など当年度限定的な費用の支出が多く、100%を下回った。しかし、当年度限定的な費用を除くと経費回収率は106.8%となり、汚水処理に係る費用の全てが使用料で賄えている状況で、類似団体と比較しても高い水準にあると言える。⑥汚水処理原価は流域下水道維持管理負担金の増加や当年度限定的な費用の支出により昨年度に比べて増加したが、効率的な整備と接続促進活動等の取組により有収水量は順調に伸びており、今後限定的な費用支出がなくなれば効率的な汚水処理が実施できる見込みである。⑦本町の下水道は最終的に流域下水道(県の施設)に接続しており、下水の処理は流域下水道の処理場で行っているため、施設利用率はない。⑧水洗化率は類似団体平均値を下回ったものの、改善傾向にある。今年度は集中浄化槽地域の下水道接続により、大幅に数値が増加した。今後も住宅密集地域を中心とした効率的な整備を進めるとともに、積極的に接続促進活動に取り組み、水洗化率向上に努めていく。
老朽化の状況について
本町の公共下水道事業は平成2年度に着手し、平成12年度から供用開始した。事業開始からの年数が浅いため、耐用年数を超えた管渠はなく、昨年度までは管渠の老朽化に伴う更新等は行っていなかった。しかしながら、事業着手から25年以上が経過し、事業着手当初に敷設した陶管に管更生工事が必要となる部分が見つかったため、平成30年度は多額の更新費用が発生する。本町の下水道本管延長のうちの多くは陶管であり、企業城下町という特色から大型車両の通行が非常に多いため、今後、耐用年数を超える前に振動等による損傷によって補修や管更生が必要となるケースが増加することが予想される。そのため、事業費の平準化を図るべく計画的に管渠の点検・修繕などの予防保全を実施するとともに、改築・更新費用の増加に備えて財源の確保に努めていく必要がある。
全体総括
本町の公共下水道事業の経営の効率性は、当年度限定的に発生した費用を除いて考えれば類似団体と比較しても概ね高い水準であると言える。住宅密集地域の下水道整備や接続促進活動等の取組により有収水量・使用料収入ともに順調に増加しているが、一般会計繰入金に依存している状態であることや、長期的には管渠の老朽化対策費用の増大が見込まれることから、使用料水準の適正化に関する検討を含めさらなる経営改善が必要である。今後の取組としては、平成30年度中に経営戦略を策定し、経営の健全化及び効率化に活用していく。また、平成32年度から企業会計に移行する予定であり、資産評価の実施により所有する管渠等の資産状況の一体的な把握が可能となるため、企業会計移行後にストックマネジメント計画策定に着手し、計画的かつ効率的な更新・維持管理を目指していく。さらに、県主導による広域化・共同化の検討が進んでいることから、今後は流域下水道や他市町との連携強化を含め、本町の公共下水道事業の方向性を検討していく。