経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は、総費用は昨年度に比べてわずかに増加したものの、使用料収入が増加し総収益が増加しため、昨年度に比べ向上した。今年度も100%を超えており黒字経営だが、一般会計からの繰入金が総収益の約7割を占めており繰入金に依存している状態であるため、経営改善が必要である。収益性を考えた効率的な整備と接続促進活動により接続率を向上させ、さらなる使用料の増収を目指しつつ費用の削減に努めていく。⑤経費回収率は昨年度に引き続き100%を下回ったが、流域下水道維持管理負担金や当年度限定的な費用である法適用業務委託料の増加により汚水処理費が増加した一方で使用料収入も増加したため、わずかに改善した。当年度限定的な費用を除くと経費回収率は104.8%となり、汚水処理に係る費用の全てが使用料で賄えている状況で、類似団体と比較しても高い水準にあると言える。⑥汚水処理原価は有収水量の増加により昨年度に比べて低下した。類似団体と比較すると高い数値となっているが、法適用業務委託料等の当年度限定的な費用がなくなれば汚水処理原価は185円程度となり、類似団体と比較しても低い数値となる見込みである。今後も効率的な整備と接続促進活動等の取組により有収水量の増加を目指し、効率的な汚水処理の実施に取り組んでいく。⑦本町の下水道は最終的に流域下水道(県の施設)に接続しており、下水の処理は流域下水道の処理場で行っているため、施設利用率はない。⑧水洗化率は、供用開始区域内人口の増加幅が大きかったため、昨年度に比べてわずかに低下した。今後も住宅密集地域を中心とした効率的な整備を進めつつ積極的に接続促進活動に取り組み、水洗化率向上に努めていく。
老朽化の状況について
本町の公共下水道事業は平成2年度に着手し、平成12年度から供用開始した。事業開始からの年数が浅いため、耐用年数を超えた管渠はなく、平成29年度までは管渠の老朽化に伴う更新等は行っていなかった。しかしながら、事業着手から25年以上が経過し、事業着手当初に敷設した陶管に管更生工事が必要となる部分が見つかったため、平成30年度は多額の更新費用が発生した。また、令和元年度以降も必要に応じて陶管管路の改修工事を行っていく予定であるが、本町の下水道本管延長のほとんどは陶管であることから将来的に更新費用の大幅な増加が見込まれる。そのため、事業費の平準化を図るべく計画的に管渠の点検・修繕などの予防保全を実施するとともに、改築・更新費用の増加に備えて財源の確保に努めていく必要がある。
全体総括
本町の公共下水道事業の経営の効率性は、当年度限定的に発生した費用を除いて考えれば類似団体と比較しても概ね高い水準であると言える。住宅密集地域の下水道整備や接続促進活動等の取組により有収水量・使用料収入ともに順調に増加しているが、一般会計繰入金に依存している状態であることや、長期的には管渠の老朽化対策費用の増大が見込まれることから、使用料水準の適正化に関する検討を含めさらなる経営改善が必要である。今後の取組としては、平成30年度中に策定した経営戦略を活用して経営の健全化及び効率化に努めていく。また、令和2年度の企業会計移行後にストックマネジメント計画策定の検討に着手し、将来的には策定したストックマネジメント計画に基づき、改築更新費用に充てられる国庫補助金等を活用しながら計画的かつ効率的な更新・維持管理を行っていく。今後は流域下水道および近隣他市町との事務共同化や設計業務の民間委託等の検討をはじめとして、人口減少社会において、また少ない職員数でも持続可能な公共下水道事業のあり方を模索していく。