経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率」は100%を超え、類似団体平均値を15ポイント超上回っている。この要因としては経常収益の56.8%を占める一般会計からの繰入金(516,137千円)によるところが大きい。経営基盤の安定化に向け、使用料収入の確保に努めていく必要がある。「③流動比率」は類似団体平均値を20ポイント超下回っているが、要因としては移行時の引継現金が僅かで十分な内部留保が確保できていないこと、流動負債に分類される企業債(翌年度償還額)がピークに近づいていることによるものであり、今後改善していくと見込まれる。「④企業債残高対事業規模比率」は、全国平均・類似団体平均値を大幅に上回っている。令和元年度末の企業債残高は5,282,103千円であるが、施設建設時に借り入れた企業債が間もなく償還終期を迎えること、事業費の平準化に努めていることなどから、残高は毎年5%程度圧縮できており、今後比率も改善していくと見込まれる。「⑤経費回収率」は、全国平均・類似団体平均値を下回り、使用料収入で汚水処理費が賄えていない状態である。要因は複合的であり、使用料水準が長年据え置かれたままであること、「⑧水洗化率」が伸び悩んでいること、不明水(有収率の低下)による「⑥汚水処理原価」への影響が挙げられる。今後、接続促進活動と並行し、適正な使用料水準の検討、不明水対策を進めていく必要がある。「⑦施設利用率」は、全国平均・類似団体平均を大きく下回っている。事業計画区域内の管渠整備率は89.9%に達しているが、人口減少や接続の伸び悩みなどにより想定した処理水量が確保できていないことによるものである。接続促進による施設利用率向上は欠かせないが、今後、計画区域の見直しと施設規模の検討が必要である。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」は、全国平均・類似団体平均値を大幅に下回っており、一見老朽化度合は低いように思えるが、施設は平成4年供用開始で約30年経過している。比率が低くなった要因は、分母となる償却対象資産の帳簿原価が、移行時の固定資産評価において、経過年数に相当する減価償却累計額を控除した額となっていることによるものであり、実態を反映した指標とはなっていない。また、法定耐用年数を超えた管渠及び更新した管渠が存在しないため、「②管渠老朽化率」「③管渠改善率」は数値なしであるが、事業開始が昭和49年であり、初期に布設した管渠が間もなく耐用年数を経過する。引き続き「ストックマネジメント計画」に基づき、費用の平準化に努めた更新を進めていく。
全体総括
当市公共下水道事業は、令和元年度より地方公営企業法の一部(財務規定等)を適用し、企業会計方式による経理処理に移行した。移行初年度であり経年比較できないが、経営面では一般会計からの繰入金に大きく依存しており、基盤強化のためには使用料収入の確保が必須である。また、建設改良費の財源である社会資本整備総合交付金の交付要件として、収支構造適正化に向けた取組が位置付けられ、令和7年度以降は業績目標の達成状況、使用料単価、経費回収率及び使用料改定の状況によっては、重点配分の対象外となることが示されている。収支構造の検証・見直しサイクルの構築に取り組み、安定した汚水処理の継続に向けた計画的な施設更新と地震対策を進めていく必要がある。