経営の健全性・効率性について
経常収支比率は単年度収支が黒字となる100%を上回っているが、使用料収入は減少傾向にある。令和2年度はコロナ禍の影響とみられる有収水量の増加により使用料収入が増加したため、比率がやや上昇しているが、一時的なものである可能性が高く、今後の動向を注視していく必要がある。累積欠損金は発生しておらず、健全な経営であるといえる。流動比率は極めて低水準であるが、流動負債の大半を占める企業債の償還がピークを越え減少に転じたことや、現金預金の増加などにより、今後は改善が見込まれるものである。企業債残高対事業規模比率は、企業債残高の減少及び使用料収入の増加により低下している。経費回収率は汚水処理費の減少や使用料収入の増加により改善しているが、なお100%には達しておらず、今後も更なる経費節減に努めるとともに、適正な使用料水準の検討を行う必要がある。汚水処理原価は資本費に係る汚水処理費が大幅に減少したことなどにより低下したが、依然として使用料単価を上回っており、今後の有収水量の推移や汚水処理費の増嵩抑制を注視していく必要がある。施設利用率は類似団体の平均値を上回っており、効率良く施設を利用していると言える。水洗化率は類似団体の平均値を上回っており普及が進んでいるが、今後も普及を促進し、100%に近づけるように取り組む必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は類似団体平均に比べ低水準であるが、これは企業会計に移行してまだ3年と期間が短いためであり、今後の動向を注視していく必要がある。管渠老朽化率は、まだ法定耐用年数を経過した管渠が無いため0%となっている。管渠改善率は類似団体平均を上回っているものの極めて低い水準にある。これは、まだ管渠の本格的な更新時期を迎えていないためで、そのため小幅な改善率で推移している。当市の下水道事業はまもなく管渠の改築・更新時期を迎えることから、今後はストックマネジメント計画に基づき改築を進めていく予定であり、将来的には管渠改善率は上昇するものと考えられる。
全体総括
下水道使用料は、有収水量の増加により増収となったが、これはコロナ禍による在宅率の上昇によるものとみられ、有収水量の減少傾向は続くと予想される。処理費用の減少などもあり、経費回収率は昨年度より6ポイント余り改善したものの、なお100%を下回っており、使用料で回収すべき経費を十分に賄えていない。今後は、下水道施設の耐用年数が順次到来し、老朽化による更新費用や維持管理費の増大が予想されるところであり、人口減少や節水機器の普及等により下水道使用料の収入増も期待できないことから、今年度策定した経営戦略を基に、投資を抑制し維持管理費の平準化を図りつつ、適正な使用料水準について検討を進める必要がある。