経営の健全性・効率性について
①経常収支比率単年度の収支が94.73%であり,前年度と比較し13.68ポイント減少した。類似団体平均に比べても下回っている。これは,収益的収入が減少したことのほか,営業費用が増加したことが主な要因である。今後収入確保と支出の抑制に努める必要がある。②累積欠損金比率収益的収入の減と営業費用の増により純損失が発生し,未処理欠損金となった。この状態は経営の健全性に問題があり,水洗化勧奨による使用料の増,繰入金の確保など収入増加の取り組みと合わせ,経費全体を抑制できるよう,経営改善に取り組まなければならない状況である。③流動比率流動負債が流動資産を上回っているため望ましい数値である100%以上と乖離が生じている。また類似団体と比較しても33.9ポイント低い。これは流動負債の大半である企業債の翌年度償還額が多額であり,またその財源を償還年度の一般会計繰入金に依存していることが要因と考える。流動資産増加と計画的な企業債借入により償還額を抑制していくことが必要である。④企業債残高対事業規模比率一般会計負担が見込まれる額を除いた企業債残高が営業収益の10倍以上となっている。類似団体,全国平均と比較しても比率が高い。改善のためには新規借入抑制と営業収益の増が必要である。⑤経費回収率103.76%となり,下水道使用料で汚水処理に要する費用が賄えている状況である。類似団体との比較でも上回っている。⑥汚水処理原価汚水1㎥当たりの処理単価は194.48円で,類似団体と比較すると36.67円高い。前年度よりも減少したが,経費が高くなる原因は事業区域の面積や処理場数,不明水処理,資本費など複数あり,効率的な維持管理により汚水処理原価が高くならないよう留意が必要である。⑦施設利用率,⑧水洗化率施設利用率は類似団体と比較すると19.89ポイント低い。処理場の規模に対して処理水量が少ないため施設利用率が低くなっている。⑧の水洗化率も似団体と比べ11.23ポイント低い。水洗便所設置済人口を増やすことで水洗化率と施設利用率の向上が見込まれ,公共用水域の保全につながることから,下水道への接続勧奨に取り組む必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率②管渠老朽化率③管渠改善率①有形固定資産減価償却率は,6.89%で類似団体と比較すると18.77ポイント低いが,これは,令和2年度から法適用企業に移行したためである。②管渠老朽化率は0.07%となった。耐用年数を迎えた管渠が発生したことを示すものであり,今後増加していくと考えられることから,今後は管渠などの改善に計画的に取り組み,③管渠改善率につなげていく必要がある。
全体総括
経常収支比率の減少や累積欠損金の発生など,経営状況は前年度と比較すると悪化したといえる。そのほかの経営指標を類似団体,全国平均と比較しても経営の健全性・効率性が確保できているとは言い難く,一般会計への依存により経営していることがわかる。令和2年度から地方公営企業法を適用し,損益や資産・負債の状況が明らかになった。中長期的な安定経営のため,今後,課題の把握とその改善に努めることが重要と考えている。