経営の健全性・効率性について
①経常収支比率:昨年度と比較して4.56ポイント減少した。これはエネルギー価格の高騰などに起因する委託料や動力費の増加が主な要因である。②累積欠損金比率:平成27年度に使用料改定を実施したことにより解消している。③流動比率:昨年度と比較して10.98ポイント減少した。また、類似団体平均よりも4.07ポイント下回る状況となっている。これらの要因として、農業集落排水の統合に伴い、当該地区分の企業債の償還を公共下水道事業で行うようになったことが考えられる。しかしながら、平成29年度以降、毎年数値が下がっていることから、現金を確保することが喫緊の課題であると認識している。④企業債残高対事業規模比率:令和2年12月に実施した使用料改定により、133.31ポイント改善した。しかしながら、依然として類似団体平均を上回る状況である。これは、公共下水道事業が整備段階にあり、その財源として企業債を発行していることによるものである。今後も企業債の発行状況を注視していく必要がある。⑤経費回収率及び⑥汚水処理原価:有収水量1.あたりの汚水処理費を表す汚水処理原価が昨年度と比較して32.92上昇しているが、これは当該費用のうち資本費から控除する、分流式下水道に要する経費の算定方法を見直したためである。また、それに伴い、汚水処理費用を使用料収入でどの程度賄えているかを表す経費回収率は昨年度と比較して11.67ポイント減少した。⑦施設利用率:昨年度と比較して2.02ポイント減少した。類似団体平均も下回っている状況だが、公共下水道事業は整備段階であるため、今後の推移を注視していく。⑧水洗化率:昨年度と比較して1.42ポイント減少した。これは農業集落排水の統合に伴い、当該地区を公共下水道区域として算定するようになったことが影響していると考えられる。今後とも、市で行っている受益者負担金に係る早期接続による還付などの接続推進策を積極的に周知し、水洗化率の向上に取り組みたい。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率:令和3年度の数値は決算状況調査の報告誤りによるもの。正しくは「44.34%」である。この指標は下水道事業が保有する有形固定資産の減価償却がどれだけ進んでいるかを示すものであり、類似団体平均値を上回っていることから、類似団体よりも資産の老朽化が進んでいることが分かる。公共下水道事業は整備段階の事業であること、また、2つの処理場を有し、耐用年数が短い機械設備が多いことから減価償却費がかさむ傾向にある。②管渠老朽化率:法定耐用年数を経過した管はないため、管渠老朽化率は0.00%となっている。③管渠改善率:法定耐用年数を経過した管はないため、管渠改善率は0.00%となっている。
全体総括
令和3年度決算は、前年度に引き続き当期純利益を計上した。平成27、30年度及び令和2年度に実施した使用料改定により、長年繰り入れていた赤字補てんとしての基準外繰入は平成30年度に解消されたが、エネルギー価格の高騰に起因する費用の増加と分流式下水道に要する経費の見直しにより、経常収支比率と経費回収率の値が前年度と比べて低い値で推移した。今後も安定した経営を進めていくためにも水洗化率向上の取組を進め、使用料収入の増加を図っていく必要がある。また、汚水管渠の布設並びに処理場設備の更新などの事業が予定されていることや、流動比率が減少していることから、施設の統廃合の推進や汚水処理経費の削減など、事業運営のさらなる効率化も図っていく。さらに、平成29年度に策定し、令和3年度に見直しを行った経営戦略に対する進捗状況を毎年管理することで、計画と実態の乖離を把握し、経営健全化に努めていく。