経営の健全性・効率性について
収益的収支比率については、支払利息が減少していることなどにより改善傾向にある。しかし単年度収支が黒字となる100%との差は大きく、今後も注視する必要がる。企業債残高対事業規模比率については、類似団体と同程度の水準で推移しており、過大な投資をしていることも、必要な投資を抑制していることもなく、債務残高は適正な水準にあると考えられる。経費回収率については、使用料で回収すべき経費の88%程度しか使用料で賄えておらず、また、類似団体との差も開いており、適切な料金水準とは言えない。汚水処理原価については、平成26年度の原価が有収水量の低下により類似団体の平均値を2.6%ほど上回っている。汚水処理費は抑えられているものの、1㎥あたりの汚水処理コストはやや高いと言える。施設利用率については、最近は80%を越えて推移しており、また、類似団体の平均値も大きく上回っているため、効率良く施設を利用していると言える。水洗化率については、水洗便所の設置が順調に進んでおり、最近は94%前後で推移している。類似団体の平均値は約91%であり、当市の水洗化率は良好と言える。
老朽化の状況について
管渠改善率については、極めて低い水準にある。これは、まだ管渠の本格的な更新時期を迎えていないためである。下水管渠の耐用年数は50年と定められているが、当市下水道事業の開始からの経過年数は約43年であり、そのため小幅な改善率で推移している。将来的には管渠改善率は上昇するものと考えられる。なお、処理場施設は、築35年以上経過しているため、改築及び耐震化工事の検討が必要であるが、運転用の機械・電気設備については、耐用年数を考慮し、長寿命化計画を立て、随時改築工事を行っており、概ね更新が終わっている。
全体総括
当市の下水道事業については、これまで適切な規模の投資を続けてきた結果、施設を効率よく利用できており、また水洗化も順調に進んできていると言える。しかし、収益性の面では問題があると言わざるをえない。使用料収入が充分でなく、不足分は一般会計からの繰入金に頼っている状態である。今後、管渠の更新時期を迎え改築費の増大も見込まれる。これについては、管路の長寿命化計画を策定し、コストの最小化を目指すことになるが、借入による資金調達も想定され、その償還金は収支を圧迫することになる。継続して経費節減や有収水量の増加に努め、収支改善を図ることが必要であるが、経営の健全性を高めるためには、使用料の改定も視野に置く必要があると考えられる。