経営の健全性・効率性について
当市の公共下水道の整備率は、令和元年度末現在で70.5%と低く、現在も面整備を進めているところである。収益的収支比率は、企業会計移行に伴う打切り決算により、総収益・総費用共に減少しているが、地方債償還金の増加により前年度に比べ比率が低下したものである。依然として、総収益で総費用及び地方債償還金を賄えていない状況であり、今後も面整備に伴う地方債償還金が増加していくことから、当面、大きく改善する見込みは少ないものの、引き続き経費削減や接続率向上を図っていく。企業債残高対事業規模比率は、平成28年度から大幅に低下しているが、これは分流式下水道経費算定方法の変更等により一般会計負担額が増加したことによるものである。令和元年度に増加したのは、打切り決算により費用の減少による分流式下水道に要する経費の減少に伴う一般会計負担額の減少及び営業収益の減少によるものである。また、経費回収率と汚水処理原価については、打切り決算による汚水処理費の減少により、経費回収率は高くなり、汚水処理原価は低くなっている。なお、施設利用率を始めとする他の比率については、類似団体平均より低水準となっているものの、今後面整備の進捗及び接続の促進に伴い、排水量の増加及び接続率が向上することで、改善が図られるものと期待している。
老朽化の状況について
当該事業の供用開始は、肱南処理区が平成7年度、肱北処理区が平成20年度である。汚水管渠については、耐用年数が50年とされていることから、現時点での更新工事の必要性は低い。処理場については、肱南浄化センターにおいて建築後20年以上が経過し、施設の経年劣化や設備の機能低下が生じていることから、平成23年度より長寿命化事業を実施し平成30年度に完了した。また、雨水ポンプ場及び肱北浄化センター等の施設についても老朽化等に対応するため、平成29年度にストックマネジメント実施計画を策定、令和元年度に実施設計を作成し、令和2年度から計画的な改築更新を行うこととしている。
全体総括
当該事業の経営状況は、健全性・効率性ともに類似団体の平均値を下回る状況となっている。これを改善し、健全で安定した下水道経営を目指すため、全体計画区域の縮小や事業計画区域の拡大による事業規模の適正化を図っている。また、維持管理費の削減に努めるとともに、戸別訪問等による接続促進や水洗化費用の融資あっせん等を行うことで接続率向上を図り、使用料収入の増加を目指している。今後においても、令和2年度に策定する経営戦略に基づき、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図る。