経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は前年度と比較すると8.04ポイント下がり単年度収支で赤字となった。要因は流域下水道事業における余剰金の返還により、一般会計からの繰入金が減少したためである。下水道使用料等での増収や支出の適正化を強化し数値の改善に取り組まねばならない。②余剰金による補填で累積欠損金は発生していないが、将来を見据えて収支の適正化に取り組まねばならない。③流動比率は6.65ポイント上昇した。100%を下回っているが、当市は下水道面整備を進行中であり、企業債借入に係る流動負債が多いことが要因と考えられる。今後の償還原資としては、面整備後に新たに供用開始となる区域から得る下水道使用料収入を充て、償還金の支払いには支障はないと考える。④企業債残高対事業規模比率は前年度に対して100.73ポイントの上昇となった。これは企業債に係る一般会計会計負担額が減少した事に起因すると考えられる。明確な数値基準が無いので、今後も経年比較や類似団体との比較により継続して分析を行う必要がある。⑤経費回収率は前年度より9.70ポイント下がったが、要因は汚水処理原価の上昇と考えられる。100%を下回る数値となっているため、下水道使用料の適正化と汚水処理費削減に向けた取り組みを推進する必要がある。⑥汚水処理原価は、類似団体と比較すると高い。これは流域下水道に係る維持管理負担金の処理単価が高く、費用構成の大半を占める事が要因であり、継続して負担金の改善を協議する必要がある。⑧水洗化率は0.21ポイント上昇し、類似団体とほぼ同水準となっているが、汚水処理の適正化や下水道使用料収入の向上を図るためにも水洗化促進の取り組みを強化する必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率については前年度と比較すると2.50ポイントの上昇となった。当市は流域関連公共下水道のみであり、処理場等の施設資産を持たず資産の大半が管渠資産であるため、減価償却は類似団体と比較しても低い状態にある。また、老朽化についても事業開始から約30年で、管渠の一般的な耐用年数50年に対して比較的短く、修繕に要する費用はまだ大きくはない現状にある。令和7年度の概成後は、更新・長寿命化に焦点を当てて、減価償却の現状を踏まえながら、リスク評価や優先順位付けを行い、投資計画等を見直していく必要がある。
全体総括
下水道事業を円滑に運営するため、下水道使用料や汚水処理費の適正化を進める事により、収入の増加や支出の適正化にさらに取り組む必要がある。また、当市の下水道面整備は終盤を迎えているため、今後は人口減少に伴う需要水量の減少や、老朽化による資産維持管理費を考慮しつつ、費用対効果と中長期的な施設維持を見据えたストックマネジメント計画を軸に、持続可能な下水道事業運営を考えていかなければならない。