経営の健全性・効率性について
①法適用となった平成24年度以降、平成27年度までは現在の使用料水準で汚水処理費を賄えず、経常収支比率が100%を下回る赤字経営が続いていた。しかし、平成27年度に平成26年度からの災害復旧事業が終了したことで費用が減少し、平成28年度には経常収支比率が100%を上回り、黒字経営となった。平成30年度においても同様の水準を維持している。②赤字経営が続いていたため増加していたが、平成28年度以降は黒字経営となり、平成30年度で欠損金が解消した。類似団体の平均値を下回っているが、これは、本市の指標が法適用となった平成24年度から5カ年のみの累積数値を表しているためである。③平成26年度以降について100%を下回っているが、これは、会計基準の見直しによるものであり、支払能力が急に失われたとは言えないが、赤字経営が続いていたことや工事資金の支払による現金預金の減少からこの様な状況となっている。平成30年度については、平成29年7月から使用料改定が通年となり、経営の改善が図れている。④平成30年度の比率の増については、管渠・雨水排水ポンプ場の整備事業費が増加したことによるものである。今後上記事業が完了すれば、低い数値で推移していくと考える。⑤平成28年度までは、100%を下回り、必要な経費を使用料により賄えていない状況にあり、また、類似団体の平均値に比べいずれの年度も低い水準にあったが、平成29年7月の使用料の改定により100%を上回り、以降100%を上回っている。⑥類似団体の平均値に比べいずれの年度も安価となっている。これは、施設利用率が類似団体の平均値に比べて高く、施設を効率的に利用できているためと考えられる。⑦類似団体の平均値に比べいずれの年度も高い水準となっており、施設を効率的に利用できていると言える。これは、水洗化率が類似団体の平均値に比べて高いことによると考えられる。⑧類似団体の平均値を上回る水準となっている。これは、水洗便所への改造に必要な資金融資に係る利子補給制度の整備や生活環境の改善等の啓発活動等、水洗化率向上のための取組を実施してきたことによると考えられる。100%を目標とし、引き続き水洗化率の向上に努める必要がある。平成24年度の法適用、平成26年度の会計制度の見直しにより、経営状況の実態がより明らかになった中で、人口減少時代に見合った使用料水準の見直しを含めた経営改善に取組んだ。その結果、経営状況は改善している。
老朽化の状況について
①経年により年々増加しているものの、100%を大きく下回っているため、施設全体の老朽化度合は低いと言える。これは、耐用年数の短い施設の更新を適切に繰り返してきたことによるものである。②平成27年度以降、管渠整備から一定の期間が経過したことで耐用年数を迎える管渠が増加しており、今後も経年による増加が予想される。また、高低差の大きい地形等に埋設された管渠においては、耐用年数を超えていなくても危険度が高いことが考えられる。今後は、このような環境下にある管渠を含め、調査と対策を講じていく必要がある。③耐用年数を超過した影響度の高い主要管渠については、長寿命化計画を策定した上で、健全度の低いものから改築更新を行っている。今後は、対象管渠が増加していくことから、計画的に改築更新を実施する必要があり、そのための投資についても増加すると考えられる。また、陥没事故等を防止するため、予防保全型の維持管理が必要となる。以上のことから、今後は管渠についても更新等の老朽化への対策を強化していく必要がある。
全体総括
本市公共下水道事業については、法適化以来赤字経営が続いていたが、費用の減少や平成29年7月分からの使用料改定などにより、平成28年度以降は黒字となり、平成30年度において、累積欠損金の解消に至った。しかし、経営改善が図れたものの流動比率が100%を下回っていることから支払能力の低下も見られる。この状況は、施設を効率的に利用できていることもあって汚水処理原価が抑えられている一方で、その原価を十分に使用料により回収できていないことからも見て取れる。今後は管渠等施設の更新等への投資が増加していくとともに、人口減少に伴う使用料収入の減少も懸念される中で、経営はより一層厳しさを増すため、より有利な財源を活用した施設の更新等を適切に実施出来るよう経営を図る必要がある。