経営の健全性・効率性について
経常収支比率についてはこれまで、必要値である100%はクリアするものの常に平均値を下回っていたが、地方公営企業法の改正に伴い、平成26年度から適用された新会計制度の影響を受け、これまで取得した固定資産の取得価格の財源の中で、補助金等により取得した価格分の減価償却費相当額を長期前受金収益化額として、適用初年度において一度に収益化する事となったため大きく改善された。この長期前受金の影響は累積欠損金比率にも見られ、平成26年度に引き続き、平成27年度においても欠損金は計上していない。なお、平成27年度は一般会計負担による営業外収入が減少したため、経常収支比率が7.74ポイント減少している。料金回収率については継続的な滞納整理業務により、平成27年度においても100%以上を維持している。また総費用の中で大きなウェイトを占める減価償却費の減少も、給水原価が引き下げられた要因の一つと考えられる。施設利用率は徐々に減少傾向にあり、これは給水人口の減少に伴う総配水量の減少が影響していると考える。給水人口や総配水量の減少は県営水道の受水費減少にも繋がり、費用の抑制となるが、同時に給水収益の減少にも繋がる為、収支バランスの均衡維持が課題となる。有収率については各年度とも平均値を大幅に上回り、90%前後を推移している事から配水量が収益に繋がっている率が高い事が読み取れる。過去から積み上げてきた累積欠損金については、先にも述べた新会計制度の新設科目である長期前受金収益化額との振替により解消されたが、この収益については現金を伴うものではなく、これまで以上に確実な資金計画を立てた上での事業運営が求められる。
老朽化の状況について
高取町の水道事業は昭和41年に事業認可を受け、昭和45年から供用開始され現在に至るが、その水道事業創設当初に布設された配水管が現在においても残存している為、管路経年化率は平均値よりも高くなっている。これを受け、平成25年度より老朽管路の更新事業を計画的に行っている為、管路更新率は年々上昇し、平成26年度において平均値に到達し、平成27年度については、平均値を大幅に上回った。今後も財政状況を鑑みながら計画的に老朽管路の更新を進めていく必要性がある。
全体総括
有形固定資産減価償却率の上昇からも読み取れるように、管路等の経年化が進んでいる為、年度計画に基づき計画的な更新事業を進め、有収率をさらに向上させる事で、収益の増加に繋がる運営が求められる。当面の課題としては、管路総延長約75㎞の内、現在も約3㎞程度残存している石綿管の更新事業である。これについては、過去の漏水件数や漏水状況等を調査し、布設箇所ごとに優先順位を付け、それによる年次計画に基づき更新事業を進めているところである。今後もその計画に基づき老朽管路の更新事業を進めると同時に、経常収支比率や料金回収率の向上を図り、経営の健全化に向けた効率性のある事業運営を進めていく必要性があると考察する。