経営の健全性・効率性について
当市の下水道事業は、地方公営企業法適用以降において黒字決算を継続しており、現在は順調な経営状態にあると考えられる。過去に施設建設費の財源とした企業債残高も減少傾向にあり、残高の規模も全国平均より低く抑えられている。令和元年度決算では、前年度に比して委託料等の費用を抑えられたため汚水処理原価が僅かに低減し、経費回収率も向上しているが、有収水量が減る中、汚水処理原価が類似団体平均、全国平均と比べても高くなっている。有形固定資産減価償却率は近年は毎年約2.5%上昇しており、施設の老朽化が進んでいる。水洗化率は年々向上し、元年度現在99.62%まで到達したが、人口減小幅が大きく、処理区域内人口密度も昨年度比20.8人/k㎡減少しており、今後、「経費回収率」は低下し、「汚水処理原価」の指標も更に上昇していくと推測される。有収水量は人口減少、節水型社会の進展により減少傾向にあり、更にコロナ禍の影響を受けた観光業による増加も当面見込めない。一方で老朽化対策のため多額の費用が発生することから、今後の経営収益は悪化していくと推測される。
老朽化の状況について
当市の下水道施設は、昭和50年代後期、平成初期、平成中期に建設のピークがあり、令和10年度には供用開始から30年以上経過する管渠が全体の65%、40年以上経過する管渠が全体の40%以上となる見込みであるが、現況は至急の管渠取替えが必要である等の切迫した状況にはないものといえる。しかし、当市の汚水には温泉下水が含まれることから、温泉成分による管渠の腐食・劣化が一般的な汚水構成の場合と比べ早く進行することも懸念される。老朽化対策の財源確保を確実に行うため、令和元年度に策定したストックマネジメント計画に基づいて、単に経過年数のみによらず管渠の劣化状況を適切に把握しつつ、計画的、効率的な下水道管渠改築を進めていく必要がある。
全体総括
現在の経営状況は概ね順調ではあるが、今後、施設の経年化に伴う維持管理・施設改築等に係る費用が増加し、また水洗化率が向上するも、有収水量の減少を賄えず、使用料収入は長期に渡り減少し経営収益は悪化していくものと推測される。このような状況下、今後も安定的・継続的な事業運営を行い、かつ、安全安心な生活空間の提供と良好な資源の循環を行っていくため、ストックマネジメント計画に基づいた計画的・効率的な改築を実施し、施設及び組織経営の一体管理を進めると共に、汚水処理費用等の精査と、経費節減のための企業努力を継続して行うこととする。なお、今後の事業状況の推移によっては使用料の改定に係る検討を視野に入れる必要があるものと考える。