経営の健全性・効率性について
平成29年4月、別府西簡易水道事業が大西水道事業へ、吉海簡易水道事業が越智諸島水道事業へ、岡村・小大下簡易水道事業と大下簡易水道事業が関前簡易水道事業へ統合し、今治市簡易水道事業は関前地区単体となった。関前が上水道事業へ統合しなかったのは既存の上水道給水区域から10Km以上離れた離島の為である。事業統合に合わせ、水運用システムの再構築も実施。県境に位置する岡村島は架橋送水管を設置、岡村島に隣接する小大下島は既設の海底送水管を利用し、共に広島水道用水供給事業からの越境供給を開始。島間の距離が長い大下島は海底送水管を繋がず島内浄水場で水を生産している。広域送水のため、ポンプ場・減圧水槽・調整池・配水池を新設したが、その財源は国庫補助金・地方債借入であった。3年据置だった地方債の償還が平成29年度より始まり、償還元金の増は⑥給水原価の高騰を招いている。また、上水道事業への統合で事業規模が小さくなり給水収益の増減率が前年度対比△89.3%(60,170千円減)となっており、④企業債残高対給水収益比率が激増している。簡水統合に向け、前年度しまなみ送水事業にかかる吉海地区の建設改良工事を多数実施。それに対する消費税の還付金が大きかったため一時的に①収益的収支比率が高くなっている。過疎化に伴う給水人口の減は有収水量の減少につながり、安定供給を実施するためには一般会計からの繰入が必要不可欠となっている。給水収益のみで給水に係る費用を賄うのは難しく、⑤料金回収率は低い。簡水統合に伴い、予備水源の廃止を実施したため、⑦施設の利用率は上昇。場所の特定が難しい海底送水管の漏水により⑧有収率は落ち込んだ。
老朽化の状況について
予定していた海底送水管の整備事業が入札の不調で翌年度繰越となったため、平成29年度において管路の更新は出来ていない。海水淡水化施設の稼動により水を供給している大下島では施設の老朽化が進み、更新時期を迎えている。海水による浄水は施設の劣化が激しく、維持管理費も高額である。そのため現在の施設を廃止し、淡水井戸と船舶給水による水源へ浄水方法の変更を図る事業を今後実施する。供用開始は2020年度予定で、新施設の稼動が始まれば、施設の老朽化は解消される。
全体総括
過疎・離島という地理的条件不利地域が簡易水道事業に残っており、国の財政支援・一般会計からの繰入、簡易水道事業債を主な財源として収支均衡を図っているが、国からは地方公営企業法の適用を求められている。独立採算制を原則とする公営企業の運営方法は収益性の低い福祉的政策を要する地域では困難を極める。本市は平成16年度に1市11町村の市町村合併を実施。バラバラであった水道料金を統一することが合併協議会で決定されており、平成22年度市内料金を統一した。地域によって料金格差を設けるという逆行は避けるべきであり、法適化に向けては検討課題が多い。