経営の健全性・効率性について
①②経常収支比率は、会計移行後、毎年100%を下回っているが、令和2年度は例年より経常収支比率が100%へ近づいている。これは主に営業費用の減少と営業外収益の増加が要因であり、特別利益を加えた決算値では、会計移行後、初の黒字となった。これにより欠損金が微減し累積欠損率も微減したが、それでもなお、平均値を大きく超える比率であることから累積欠損金の解消を早期に検討する必要がある。③流動比率は、現状では短期的な支払能力を有しているが、流動資産の減少及び流動負債の増加のため、令和2年度も微減となった。100%は下回らないまでも減少傾向が続いており経常費用の削減が限界に近い中、安定した収益確保のため、適正な供給単価の設定が必要であると考えられる。④企業債残高対給水収益比率は、会計移行まで借り入れていた企業債の償還ピークを迎えており減少傾向であるが、移行から現在まで借り入れを行っておらず、令和2年度に会計移行後初めての借り入れを行った。給水収益は横ばいであり、現状の経営のままであれば、今後は企業債を用いた投資が中心となるため後年の企業債残高の増加が懸念される。⑤⑥料金回収率は令和元年度よりも1.68%上昇し、類似団体を上回っているが、これは前年度よりも更に経常費用削減等を行い、給水原価が減少したためである。⑦施設利用率は、89.07%と変わらず高水準となっており、現状、適切な施設規模であると言える。⑧有収率は72.64%と類似団体平均と比べて未だ低く、今後も漏水調査を実施し、修繕を行うなど維持管理を行っていく必要がある。
老朽化の状況について
上水道事業として開始してからの年数が短いため、不明資産を除くと減価償却率は類似団体と比べ大きく下回っている。管路経年化率は現在のところ発生していない。しかし、今後の老朽化に対する更新事業に備えるため、経営改善を図る必要があると考えられる。また、後年、発生する更新費用を平準化するための更新計画を策定し適切な投資を行っていく必要がある。
全体総括
会計移行後、経常経費削減を行っても、なお経常収支比率が赤字であり、令和2年度の黒字決算額では累積欠損金解消までの年数が非現実的である。安定した営業収益を確保する経営改善が必要と考えられる。令和2年度の流動比率減少ペースだと100%を下回るまで少し余裕があるように見えるが類似団体平均を大きく下回っている。今後、施設や設備、管路の更新等により企業債の借入が増加に転じた後、償還が始まれば経常収支の赤字と相まって減少ペースが加速すると予測され、短期負債への支払能力が確保できなくなる恐れがある。現在までの累積欠損金の解消や今後の施設・管路更新に向けて、経営改善は早期検討課題である。投資については適切な時期に適切な施設規模となるよう計画を立てて効率的に実施していく必要がある。