経営の健全性・効率性について
【①】収益的収支比率は、総費用に企業債償還金を加えた額を料金収入や収益的収支に対する一般会計からの繰入金等の総収益で、どの程度賄えているかを表す指標です。・H25は借入金の借換に伴う償還金が増えたため、例年と比べて低下しています。H30は水需要の回復に伴い下水道使用料は増加しましたが、下水道使用料徴収業務委託料も増加したことにより約0.3ポイント低下しました。維持管理手法の見直しや接続勧奨等を行い下水道使用料の増収に努めます。【④】企業債残高対事業規模比率は、料金収入に対する企業債残高の割合です。・震災時は使用料の減収が要因で大きく増加し1427.50ポイントありましたがH24以降は減少傾向にあります。これは基礎的財政収支の黒字化を図るため、市債発行額は元金償還額を上回らないように努め、企業債残高を毎年着実に減少させているためです。H30においては企業債現在高の減少により数値が改善しました。【⑤】使用料で回収すべき経費をどの程度使用料で賄えているかを示す指標です。・震災の影響による使用料の減収などで一時低下したものの、災害復旧事業の完了に伴い、有収水量が震災前の水準に回復しつつあり年々改善傾向にあります。H30はさんみらい多賀城・復興団地に立地する企業の下水道使用料収入額の増加や、処理区域内人口及び水洗便所設置済人口が増加したことに伴い、年間有収水量が増加し、下水道使用料収入額が増加したものの、汚水処理原価が増加したため、経費回収率は前年度と比較して0.2ポイント減の約87.5%となりました。【⑥】汚水処理原価は、1トン当たりの汚水処理費用でコストを表すものです。・微増した要因は収益的収支比率でも触れましたとおり、下水道使用料徴収業務委託料が増加したことによるものです。【⑧水洗化率】は、処理区域内人口のうち、水洗便所を設置して下水処理をしている人口の割合です。・未普及解消の促進等により類似団体や全国平均と比較して高い数値を推移しているものの、引き続き接続勧奨等を行い、100%を目指すように努めていきます。
老朽化の状況について
公共下水道の事業開始後45年以上を経過しており老朽化が否めず、下水道施設の更新改築が生じてくると考えらます。今後も老朽化が見込まれる施設の調査、修繕及び下水道施設更新改築を進めて行く必要があり、特に、老朽化した中央雨水ポンプ場の電気設備や既設汚水管については、長寿命化を図るため「ストックマネジメント計画」に基づきながら改築工事や調査業務を進めます。また、震災以降に生じている汚水マンホールからの溢水問題については、宮城県に対して仙塩浄化センター内への増設ポンプの早期完成を働き掛けます。
全体総括
各指標とも東日本大震災以降は、災害復旧事業の進捗に伴い、震災前の数値に近づいてきていることから、経営環境は回復しつつありますが、下水道使用料については、近い将来高止まりすると思われます。現在の投資は復興事業を主に実施しており、事業費が国からの補助財源で賄われているため企業債による借入を伴わないものですが、復興事業完了後は企業債が財源となる管渠等の更新改築事業が主となるため、事業規模の適正な水準を見極めながら、経営戦略等の計画を策定し効率的な経営を図っていく必要があります。今後は①「単年度の収支」や⑤「料金水準の適切性」の値を100%に近づけることが経営の健全化及び将来に渡り持続可能な事業運営に資することとなるため、維持管理の更なる効率化や下水道使用料の適正な水準の検討を含めた改善策を、地方公営企業法の適用と平行して取り組み、経営の効率化により一層努めていきます。