経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、前年度から△21.52ポイントと大幅な下落となっている。これは平成29年度が、地方公営企業法の一部適用後の初決算で、特例的収支に係る基準外繰出金という例外的な収益があったため、経常収益が一時的に増大したことによるもの。令和元年度以降は100%前後での推移を見込んでいる。②累積欠損金は今年度も発生していないが、これは剰余金で補っているからであり、剰余金が枯渇する前に経営改善が必要である。③流動比率は目安とされる100%を下回っているが、これは流動負債における、高額な企業債償還金が大きな要因となっている。当市は、現在も面整備が中心であるため、企業債残高が高く、償還金も比例して高額となっている。ただ、これについては後年度の下水道使用料を原資としているため、流動比率としては大きな問題は無いと考える。④比率が減った要因としては、高資本費対策に要する経費の繰出が無くなったことにより、分流式下水道等に要する経費の繰出割合が増加、つまり一般会計負担分が増加したことが大きいと考えられる。⑤依然として100%を下回る状態となっているが、下水道使用料の伸びにより少しずつ改善傾向にある。更なる経費の見直し、水洗化の促進が必要である。⑥前年に続き、類似団体と比較しても高い状態にある。流域下水道に対する維持管理負担金が大きな要因となっているため、県に改善を訴えていくとともに、有収水量増加の取り組みが必要となる。⑧近年の住居新築、改築の増加に伴い、水洗化率も増加傾向にある。今後は、整備済区域内の未水洗箇所に対する、水洗化促進の取り組み強化が重要となる。
老朽化の状況について
①算定基礎となっている帳簿原価について、当市は平成29年度に地方公営企業法の一部適用を行ったため、資産整理の際、残存価値分のみを帳簿原価として計上している。よって、実質的な減価償却率は更に高いと予想される。しかしながら、当市は流域関連公共下水道のみで処理場等施設の資産を持たず、大半が管渠資産であるため、減価償却は類似団体と比較しても低く、ゆるやかである。また、老朽化についても事業開始から30年で、管渠の一般的な耐用年数50年に対し半分程度の減価償却であるため、修繕に要する費用はまだ大きくはない。しかしながら、令和7年度の概成後は更新・長寿命化に焦点を当て、減価償却の状況を踏まえつつ、投資計画等を見直していく必要がある。
全体総括
前年度より改善できた部分もあるが、類似団体と比べると、まだまだ健全な経営状況にあるとは言い難い。当市の下水道面整備は終盤を迎えているため、今後は費用対効果と中長期的な施設維持を見据えた、ストックマネジメント計画を軸に、持続可能な下水道事業運営を考えていかなければならない。また、経営効率化の方策として国が推し進める広域化・共同化計画の活用も検討する必要がある。このほか、さらなる収益の確保策として、水洗化促進(水洗化率向上)が今後の課題となる。