経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は105.7%であり、対前年度比1.4ポイント増となった。この要因は、経常収益のうち主たる収益である給水収益が0.9%の微増となったものである。給水収益が増加した要因は、人口減少にもかかわらず、給水戸数の増加と一部施設での給水需要増加によるものである。また、営業外収益については他会計補助金及び各種引当金戻入益の増加が主な要因である。一方、経常費用については対前年度比で1.53%の増となったが、修繕費、減価償却費、退職給付費の増が主たる要因である。③流動比率は対前年度比で、ほぼ横ばい状態にある。類似団体に比べるとやや支払能力では劣っている。④企業債残高対給水収益比率は、減少傾向にあるが、類似団体よりやや高くなっている。今後計画的な投資を行うために企業債を必要規模借り入れることにより、企業債借入額が企業債償還金を上回り、この比率が上昇する可能性がある。⑤料金回収率は依然100%未満となっており、給水収益のみで費用を賄うことはできていない。一般会計からの繰入に依存しており、全国平均及び類似団体平均に比べると10ポイント以上低く、費用に見合う適正な料金設定とは言えない状況である。⑦施設利用率は過去5年間で大きな変動はなく、類似団体より高くなっているが、人口減少とともに下降ぎみである。⑧有収率については、毎年の漏水調査実施と、それにもとづく修繕により対前年度比で約1ポイント上昇し、改善傾向にあるが、引き続き有収率の低い地域の漏水調査を実施して、さらなる改善が必要である。
老朽化の状況について
①有形固定資産の減価償却率は、H26の会計基準見直しによるフル償却により、適正な減価償却率となった。H27においては微増となったが、今後必要な更新を行わなければ減価償却率は年々上昇することになる。②経年化率は全体の約22%となっているが、全国平均及び類似団体の値よりも高くなっており、今後これらが老朽管となり、老朽化率が上昇していく。③H27における管路の更新実績は0.20%で、平均値も0.66%と老朽化度を抑えるために必要な更新率には程遠い状況にある。今後は早急に更新計画を策定し、財政規模に見合った適正な規模の更新を行う必要がある。
全体総括
本会計の経常収支比率は毎年100%を超えているため、多大な特別損失がない限り、毎年当期純利益を計上し、未処分利益剰余金も年々増加している。しかし、その当期純利益の額は年々減少傾向にある。また、当期純利益は計上しているものの、資金収支では毎期末における現金預金の残高は減少傾向にあり、損益勘定留保資金が数年後には枯渇し、未処分利益剰余金を取り崩さなければならない事態になることが予想される。さらに、H29において簡易水道事業統合による会計統合により、本会計の経営は厳しい運営を余儀なくされる。料金回収率が100%を切っている中、さらに低い法非適用の簡易水道事業を統合すれば、投資に回すだけの資金を得ることは困難であり、適正な料金への見直しを視野に入れていかなくてはならない。また、必要な更新需要を早急に把握し、適正規模の投資活動を行っていかなくてはならない。今後は必要な投資活動のための財源確保のため、簡易水道統合後の経営状況を見極め、適正な料金への見直し、漏水調査による有収率の向上、適正な投資規模の把握による企業債の借入れ等を行い、それらを総合的に判断して健全な経営を行う必要がある。